日々雑感

Z世代の成人式

 此度全国で行われた「成人式」は、多くの自治体が20歳の集いと名を打って、昨年施行された18歳の成人にこだわらなかった。コロナで成人式が行われていなかったこともあるが、「18歳は高校生で子供」の感覚が強いからだと思われる。選挙権と婚姻の自由を18歳に与えるのは賛成だが、高校進学がほぼ百パーセントの日本では、高校生を大人扱いしにくい。
 成人の日に当たって20歳代の調査が報道されたが、その一つによると父親を尊敬する人は7割強、母親は9割近くだそうだ。。これは、聞き方が間違っているのであって、尊敬ではなく感謝と置き換えるべきであろう。親に感謝する数字としてみれば、日本は健全だと思われるが、若き日に、尊敬する人、換言すればロールモデルが親であっては、夢が小さすぎる。
 Z世代の親は70年代生まれの団塊ジュニアが多いだろう。団塊ジュニアは、青春から今日までバブルがはじけた後の下り坂日本を経験してきた。その中で、Z世代は、子供と家庭に尽くしてくれた親の姿を健気に「尊敬する」と答えたのだが、社会を反映してか、大きな希望を持つことは叶わないと考えているようだ。
 Z世代は「親ガチャ」を唱える世代でもある。親の遺伝子や経済状況によって自分の人生は決まってしまう。だから、努力は無駄だとの考えにつながりやすい。親の所得が高ければ、受検勉強に金を使い、いい大学、いい就職が可能で、いい人生が待っていると思いがちだ。恵まれた人々を上級国民と呼び、自分を卑下する。
 社会に足を踏み出せば、一流大学出が必ずしも成功していないこと、親に反抗して学歴を持たなかった豊かな家庭出身の若者がごまんといることを知るであろう。一例では、数年前に引きこもりの息子を殺した事務次官経験者も世の中には存在する。
 親ガチャの一類型に親リッチ(宮本弘之の著書参照)がある。一億円以上の金融資産を持つ親の子供たちについて分析がされている。ここでは、親の職業は、中小企業の経営者、開業医、不動産業者の3つだけについて書かれているが、公務員でも、天下り数回経験者や、近年では福祉施設経営者の親リッチも多い。
 親リッチは、確かに、多くの習い事や小学校からの私立教育、留学、ブランドグッズの所有などの経験に恵まれているが、必ずしも社会のリーダーにはならない。枠のはめられた人生であることが多い。医学部に行けなかった開業医の息子は家族から疎んじられるし、エスカレーター式の私立教育で、本当にやりたいことを見出せずに漫然と文系大学に進む子供が多い。留学も単位が取れずに帰国する。だとすれば、恵まれた親ガチャも大きな夢を抱くことが許されていないのは同じではないか。
 若者よ、水平にものを見て、同世代との比較ばかりするな。垂直にものを見て、あなた方に夢を持たせる社会を作れなかった上の世代を呪え。成田悠輔が言うように、若者のために高齢者は集団自決(ただし、社会的自決を言う)すべきだ。若者の労働の上に立っていつまでも役職にしがみついて座り続ける中高年齢者を若者は反乱を起こしてつまみ出せ。
 若者が夢を持ち、中高齢者が組織に居座らずに自立して食い扶持を稼ぎ、その結果、社会に新たな価値をもたらす社会を目指すべきだ。Z世代の成人に送るべきメッセージはこれだ。

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