日々雑感

ジリ貧日本の処方箋

 日本が一人当たりGDP、経済成長率、賃金水準において「先進国最低」であることは、最近になって、すっかり社会に定着した。かつて、欧米もアジア諸国も「なぜ日本は繁栄したのか」「日本の脅威」を声高に叫び、日本は喜んでマスコミの風潮を受け入れていた。
 しかし、日本は負け始めると、なかなか負けを認めないできた。特にアジアの世界で負けを認めることは嫌った。中国が2010年、世界第二の経済大国になったとき、「いつの間にか抜かれた」と反応し、2018年、韓国の賃金水準が日本を抜いたとき「韓国経済は内容を伴わない」とうそぶいてきた。だが、その事実は、継続し、日本は次にどのアジアの国に抜かれるかという状況にある。
 今更の感はあるが、数字で、日本経済の経緯を見よう。56~73年の高度経済成長期の成長率は9.1%、74~90年の安定成長期は4.2%、バブル崩壊後の91~21年は0.7%である。安倍元首相の死去、黒田日銀総裁の引退は、「アベノミクス失敗」の論調を強化しているが、「日韓関係のあるべき姿」の編著者クック・ジュンホ横浜市立大教授によれば、具体的に「経済政策の誤謬と民間の萎縮」が原因という。
 筆者は、これに、政治の貧困と人口政策の不在を加えたい。バブル崩壊以降の先送り、借金政治を作ってきたのは、志の低い世襲政治家たちだ。学問も社会経験も過小なばかりか、選挙だけで人生を送ってきた輩が経済社会のかじ取りをすることは不可能だった。
 高い経済成長は人口ボーナス時期に重なる。日本は世界に先駆けて、団塊世代を中心とする人口ボーナス期を終えた。ちなみに韓国の高度経済成長期は朴正熙大統領就任の63年から97年であり(日本は56~73年)、ベビーブームは朝鮮戦争後の55年から63年(日本は47~49年)で日本よりはるかに長かった。今、韓国がさまざまの数値で日本を抜くのは、当然なのである。文在寅前大統領が日本に対し、強気の姿勢になったのは経済の強みを感じたからである。73年、日本の高度経済成長期の最後の年では、韓国は日本のGDPの十分の一に過ぎなかったころとは比較にならない。
 それでも、日本は韓国の人口の2倍あり、生産性で負けるドイツの1.5倍もある。だから、GDPそのものはこの2国よりも上だ。アジアの国々に負けることを認めたくない日本、一国の人口の少ない欧州に勝ち続けたい日本がやるべきは、30年間の人口政策の失敗をやり直すことだ。アベノミクスの失敗は植田新総裁が是正を図るとしても、人口政策の失敗の是正はまさに総理大臣の仕事だろう。
 政治改革と人口問題への取り組みが必至だ。

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