日々雑感

平岡秀夫氏(衆院補選山口2区)を応援する

 安倍元首相の逝去、岸元防衛大臣の引退に伴い、山口県では、4区と2区でそれぞれ衆院選の補選が行われる。4月11日告示、23日投票である。
 2区の自民党候補者は岸信千代氏で、父・元防衛大臣の後を継ごうとする。これに対抗して、平岡秀夫元衆議院議員かつ元法務大臣が、今般は無所属で出馬する。この選挙はG7広島サミットの直前に、岸田政権の是非を問う選挙として観られているが、実はもっと深い意味がある。
 言うまでもなく、山口県=長州は150年以上に及ぶ藩閥政治の人材を担ってきた地である。伊藤博文に始まり、安倍晋三まで全都道府県最多の8人の総理大臣を輩出した県である。山縣有朋や岸信介を思い浮かべる人も多かろう。このことは、近代国家日本の揺籃期から継続してきた、ある種の誤謬が綿々と受け継がれていることを意味する。
 誤謬とは、武家社会を崩壊させ、長州を最上階に置く新たな身分制度を150年の政治史において定着させたことだ。士農工商に代わって長州閥及び平民の二層の政治における身分構造が政治家の世襲を産んだ。勿論、本家は長州の岸家、安倍家だが、類似の身分には、近年の麻生家、小泉家、河野家、岸田家などが加わる。
 つまり、世襲政治、家業としての政治が長州をオリジナルとして作られたのである。家業としての政治は、血族による継続にこそ意味があり、志を遂げる政治とは程遠い。安倍元首相は志のある政治家に見えたが、実は創始者岸信介の遺言の実施を志としたのであって、彼が生きた時代に即したわけではない。
 身分の継続のためには、一応民主主義国家である以上仕掛けが必要だ。安倍元首相は積極的に娯楽番組に登場したが、庶民を装う為政者を好感度をもってコメントするタレントやスポーツ選手が増えた。誰も政治の専門家ではない。放送法の顛末をめぐっての議論は、老舗の悪口を言わせない、老舗は理屈無く老舗だからよいのだを庶民に納得させるために起きた。
 平岡氏は長州の出身ではあるが、藩閥とは無関係の庶民の出だ。大蔵官僚、弁護士という近代的職歴の中で政界まで届いた人だ。平岡氏が闘うべきは、家業政治家を長州のみならず政界から一掃することだ。政治が家業では、借金の先送り、大親分アメリカの追随以外のことはできない。
 平岡氏は、政党の公認を受けず、連合=労働組合の応援も受けない。労働組合は、別の意味で身分制度の最上階にいる「労働貴族」だ。世界に遅れた経済成長や少子化の原因である非正規雇用には冷たい。この新セレブに支援される政党は藩閥政治に有効な対抗ができない。平岡氏は眼前の敵、背後の敵の両方に戦いを挑むことになる。
 最近では、徳川幕府の転覆にはイギリスが暗躍したことが明らかになり、司馬遼太郎の維新の志士による討幕は誤解を招く歴史観であることが指摘されている。藩閥政治がやったことのすべてが悪いわけではないが、今という危機的な世界状況の中で、家業政治家だけは退いてもらいたい。その先鞭を平岡氏につけてもらいたいのである。
 よって、筆者は平岡秀夫氏を応援する。

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