トランプ大統領と総裁選候補者
自民党総裁選が行われている。「それが何?」。マスコミの報道も候補者の集票状況や政策項目の整理をしているものの、高揚感は伝わってこない。昨年の総裁選と比較してもさらに低迷していると言わざるを得ない。なぜなら、解党的出直しの掛け声は昨年も同様だったはずが、1年経っても政治とカネの始末はつけられなかったし、物価高を原因とする生活苦は治められなかった。だから、意志ある有権者は、既に自民党を離れた。その結果が参政党と国民民主党の跳躍をもたらした。他の受け皿ができた以上、もう有権者は戻ってこない。2012年、もっぱら民主党の失政による自民党の返り咲きのようなことはない、と断言できる。棚からぼた餅は一度はあったが、今や、棚をいくら眺めても何も落ちてこないのである。
にもかかわらず、候補者は概して「古き良き自民党を取り戻す」ことを掲げている。安部政権が返り咲くときの「日本を取り戻す」が忘れられないのだろう。しかし、それは、それ程差異のない政策論争をつぶやき、古い自民党の上着を着て、保守ならぬ懐古趣味の自民党の議員たち、党員に気を使い、斜陽の集団を慰めようとする自慰行為に過ぎない。
この状況の中で、誰が横暴なトランプ政権に太刀打ちできるかという視点を設けたならば、総理総裁となるべき人物を決定する唯一かつ重要な選択基準となろう。ズバリ、茂木俊允がダントツである。コンサルタント会社マッキンゼーで身につけた国際性と英語力は、真の意味で国際社会での仕事に精通している。留学経験やチョイ仕事の経験者は候補者の中にも多いが、茂木は、まさにトランプをして「タフな交渉者」と言わしめた実力がある。野党の中にもこれほどの人材はいない。
当のトランプ大統領は、次第に狂気の政策を打ち出すようになっている。ノーベル平和賞に値する「戦争を終わらす交渉」にも失敗し、大学から優秀な留学生を追い出し、極端な移民政策でイノベーションの担い手となる科学者やエンジニアの人材流入にも歯止めをかけようとしている。しかも、保守系活動家のホープであるチャーリー・カークの追悼式では、エリカ夫人がせっかく「夫の命を奪った若者を許します」とキリスト者の信条を語ったのに対し、「私は許さない。左派の暴力は厳罰だ」と応じた。トランプ大統領は背後の支援母体であるキリスト教原理主義者を裏切っているではないか。トランプ大統領はパラノイアを疑われる。
自民党の出直しではなく、世界にほぼ相手にされなくなった日本の出直しができるのは、茂木以外にあるまい。残念ながら、彼は癇癪もちで人気がないと言われている。容貌も今一だが、格好いいのは、小泉新次郎と小林鷹之だけで、あとの3人は見てくれはよろしくない。それもそのはず、格好いいのは若い人だけなのだ。5人全員が自民党の古着を着ている中で、世界に踏み出せる唯一の人材を推すしかあるまい。