日々雑感

ご神託の時代ではない

岸田政権の支持率低下が止まらない。安倍元首相の逝去から一年以上経った今も、岸田首相は安倍氏の幻影を引きずり、その手法を踏襲しようとしている。人間は、危機にあるとき、受けた教育や体験よりも「ご神託」に頼ろうとする。それが、安倍氏の「ご神託」を守ろうとする岸田首相である。
 安倍氏自身も、第一次政権の放棄や民主党政権への憎悪から、祖父岸信介の「ご神託」に頼るようになり、政治の基本とした。安倍は成蹊の坊ちゃん教育、岸田は海外子女で学んだはずが、リベラルさは捨て、専らご神託に頼る政治家になった。それは、崩落寸前の政治と不満を抱えた国民に不安を抱き、危機感を募らせたからである。
 安倍、岸田ほどアメリカにおびえる政治家はいない。一見ニコニコしながら大統領と談笑しているようであるが、結果的にアメリカの意向に従うことに余念がない。集団自衛権容認も、防衛費倍増もかくして確立した。過去においては、吉田茂は「独立すれば憲法改正だってできるのだ」と涙を飲んだ。小泉純一郎はエルビスプレスリーと同じくアメリカが本当に好きだったから、従うことに違和感はなかった。岸田・安倍両氏は先人たちを上回るアメリカ主義だ。
 しかし、両氏はアメリカに心から従っているのではない。むしろ「ご神託」で「日本は本当ににアメリカから独立しなければ戦後は終らない」と吹聴されている。アメリカはこれを知って、やんわりと指示をしかけてくるのだ。ディープステート、つまり陰謀論は今、流行だ。それも、またぞろアメリカを動かすユダヤ人陰謀論だ。
 ユダヤ人は世界に1400万人。ざっと半分がイスラエルに、残りの半分がアメリカにいて、その他の国々は少数である。イスラエルは、建国70年にも拘わらず、大変強い先進国である。アラブとの戦いは常に優位に立つ。民主主義と先端科学の国で、核保有国でもある。社会保障は整い、出生率は先進国でダントツに高い。だが、自らの国造りに忙しい、世界の陰謀どころではない。まして日本など相手にしていない。
 アメリカでは、財務長官イェレンはユダヤ人、トランプ元大統領の女婿はユダヤ人で政権中枢には常にユダヤ人がいる。しかし、多くのアメリカのユダヤ人は、普通のアメリカ人である。シナゴーグに行くのでもなく、ヘブライ語を勉強するのでもなく、ただ教育熱心なので、大学でも成績優秀者は大概ユダヤ人だ。イスラエルに共感するも、ユダヤ基金への寄付は次第に少なくなっているのが現状である。ユダヤ陰謀説は疑わしい。
 アメリカはアメリカの国益に従って日本に「指示」しているのであって、陰謀でも何でもない。日本の首相としては、日本の国益に従って政治を行えばよい。ご神託は現代の国益ではない。もっと是々非々に、アメリカだけの視点ではない政治を行わなければ、文字通り、日本の政治は崩壊するだろう。

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