日々雑感
農業への期待
戦後の悪政の一つが農業政策であることは多くの専門家が指摘している。何よりの証拠は、農業が衰退しているという厳粛な事実だ。
今回の減反政策廃止は、本気でやるのかと思えば、やはり見返りの補助金をこれまで以上に計上することになった。戦後70年近く、ああでもない、こうでもないの補助金のオンパレードだったが、なぜ農業の厳しい現状があるのか。
昨日、銀行員から農業に転じた鈴木誠ナチュラルアート社長のお話を聞く機会を得た。農水族議員や農水官僚の認識の甘さを鋭く指摘しながら、農業者が生産コストに見合う価格設定のできる市場が必要だと言う。中小・零細で成り立っている日本の農業者のすべてが自らの価格設定を実行できれば、農業全体としても回復していくだろう。
これを聞いて、21世紀初頭、ヤーギンとスタニスローが著した「市場対国家」を思い出した。国家がいじくり回して政策に手垢がついたら、一度は市場に任せる方法をとってみる必要はあろう。ミクロで市場を使い始めれば、農業のマクロが成功することを信じたい。
翻って、筆者が30年間携わってきた社会保障は、ミクロの成功を積み重ねるのではなく、財政健全と適正な所得再配分というマクロの成功が主体だ。市場の出る幕は少ない。
ヤーギン等の著書は、格差社会が意識されるようになって評価が落ちたと思うが、しかし、時にものの見方を変えるという点では優れたメッセージを与えている。これからの農業に期待したい。