日々雑感

マオイズム

 毛沢東主義のことではない。フギュアスケートの浅田真央選手がもたらしたスポーツ精神のことである。金メダル獲得という自らに課した目的が遠のいても、全身全霊の華美な演技をやり遂げた。全国が感動した。
 記者会見の中で、森元総理が「あの娘は、肝心の時に転ぶ」という発言に対し、にこやかに「今は森さんも後悔しているでしょう」とコメントした。自分の思いと他人への配慮を備えた優れた発言である。
 トップを極めようとする人間に、いかに年が若いからと言っても「あの娘」という呼び方はない。また、テレビ番組のコメンテーターの「もう真央ちゃん、引退していいですよ。好きな人も作らないで、食べたいものも食べないできたのだから」という発言も気になった。森さんと同じ年恰好の男性だったが、団塊世代よりも10年は上の「あの時代のおじさん」には、目標に向かって生き抜く女性の存在を理解するのは難しい。
 毎年、子供の日に、初場所で優勝した関取が厚生省前で鯉のぼりを挙げる行事が行われているが、私が担当課長だった1990年代の半ば、貴ノ浪関が鯉のぼりを挙げに来た。昼食を摂りながらの貴ノ浪関の話に、筆者は感動してやまなかった。筆者より20歳以上も年下の21歳の貴ノ浪の確固たる哲学に、とても人間的にかなわぬと思ったのである。十代から艱難辛苦に立ち向かい、自らを磨き、そして勝負に挑んできた。その凄さが言語に表れていた。とても賢いお方であった。
 自分を極めるために生きている人を尊敬してやまない。年齢は関係ない。マオイズムは、ともすれば目標を失ったかに見える日本の将来に、新たな目標を立て一途に向かえば状況が変わることを教えてくれた。一途に向かう姿勢を敬い、揶揄や誹りを慎むべきとも思う。

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