日々雑感

集団的自衛権の危惧

 太平洋戦争終戦後、アメリカは「日本が絶対に戦争できない国にしてやるぞ」の強い意志で憲法9条を導いた。しかし、中国に共産国家が成立し、朝鮮戦争が始まるや、掌を返して、「違憲でない軍隊」自衛隊をつくった。
 この経緯を考えれば、国際情勢の変化に応じて、時の内閣が憲法解釈を変えたのは既に経験したことである。憲法改正手続きをとるべきなどその手法には議論があるものの、集団的自衛権容認の議論を封じ込めることはできない。
 問題は、国際情勢の変化をどう読むか、である。今回の集団的自衛権容認は、どう修飾したところで、中国を仮想敵国としていることは明らかである。中国を抑止するためにアメリカとの同盟関係を強くする手段として、集団的自衛権を使ったのであろう。
 しかし、これは、大きな間違いである。先ずは、日米関係は、実は極めて悪いという認識を持たねばならぬ。オバマ大統領は、中国外交を円滑に進めることが優先であり、日本の思惑には乗らない。オバマ訪日の際に彼が安倍政権に送ったメッセージは、鮨屋で、(実は鮨をほとんど食べずに)、「中国・韓国を刺激するな、それよりTPPを早くしろ」だったはずだ。
 バイデン副大統領もライス大統領補佐官も靖国参拝を強行した安倍総理に不信感を抱いている。日米関係は決してよくない、それどころか冷え込んでいると言っても過言ではない。尖閣列島で衝突があったとしても、本国の攻撃を受けなければ宣戦布告をしないアメリカの議会は「日本が勝手に治めればいい」と言うはずだ。
 それとは逆に、嫌戦家のオバマ大統領が、万が一、イラクなどに派兵する必要が出た場合、集団的自衛権を援用して、日本に戦え、と指図する可能性があろう。アメリカは日本より賢く、日本の上に立って行動することを改めて知る必要があろう。
 対米、対中、対韓の関係がいずれも悪いこの時に、集団的自衛権容認は危険性を秘めている。集団的自衛権の議論を否定はしないが、周辺の国際関係を改善することが先決だ。

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