日々雑感
嘘は罪
三十三年前、筆者の結婚式で、知己の精神科医が歌を唄った。トニー・ベネットの「嘘は罪」である。「その愛は、本当ですか」という歌詞を知れば、なんとも意味深長な歌であった。
嘘は罪。嘘が人の死を招くこともある。理研の笹井副センター長の死は、密室の嘘から始まった。ES細胞が混入して万能細胞になったことは科学的に明らかである。にも拘らず、ダメ押しでSTAP細胞の検証が行われている。
嘘の発信源はここで問わぬ。しかし、「科学者に嘘はない」と信じてやまなかった笹井先生と若山山梨大教授は苦しんだ。一定以上のストレス負荷がかかれば、人間は必ず鬱病になり、自殺志向が強くなる。まして、真摯なる科学者においてをや、である。
なぜ再生医療研究の第一人者を失わねばならなかったのか。なぜ本人が辞めたいと申し出たときに辞めさせなかったのか。なぜ関係者処分を先延ばしにして、STAP細胞の検証を始めたのか。
責任の所在は、これまで理研を責め、第三者的に対応してきた文科省のトップにある。聞けば、小保方氏を入れての検証は、理研も文科省担当官僚も反対していたと言う。この事件を引き伸ばし、科学の声を聴かず、個人の名誉優先、組織防衛、果ては早大博士号の擁護まで行ったのは、文科省のトップではないのか。
何よりも科学者の死を悼む。