日々雑感

大粒の人

 9月は、李香蘭が亡くなり、土井たか子が亡くなった。名実ともに時代の象徴だった二人の女性の死は静かに報じられた。
 美貌と達者な中国語によって国策映画の女優に抜擢された李香蘭は、漢奸としてあやうく処刑されるところだった。数奇な運命の後、戦後は、タレントとして国会議員として、海外の要人のインタビューなどに登場したが、平和を必死で望むその姿にはメッセージ性があった。姿自体が「大粒」の存在であった。
 土井たか子の政治を必ずしも支持してきたわけではないが、論理を持ち、堂々と発言し、揺るがぬ信念は間違いなく戦後の政治の一角を作り上げた。大物である。
 現在右翼との交流が取りざたされている数人の女性政治家と比べると、土井たか子に捧げる言葉は「大粒」の政治家である。土井を学べ、と安倍首相の取り巻きに進言したい。予期せぬ質問にたじろがず、堂々と持論を展開すればよい。右翼が良いと思うなら、良いと何故言えないのか。
 海外の記者が安倍政権を担う女性政治家を批判的に報じているのは、彼女たちが「何者」かわからないからである。安倍首相が思想的に近いから選んだという事実しか知らないのである。彼らは、彼女たちが民主主義を理解しているのかどうかを試している。
 女性ばかりでなく、劣化したと言われる日本社会に、大粒の出現が期待されてやまない。

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