日々雑感

定年延長

 政府の方針に基づき、65歳までの再雇用が当たり前になってきた。60歳以降は、労働形態も待遇も変わるが、働き続けるのは、個人にとっても、社会保障制度にとってもプラスの効果が大きい。
 しかし、経営者側には、少しの異論がある。5年分の雇用が企業のコスト・ベネフィットにとって必ずしもプラスにはならない。技術系はまだしも、事務系の古参は、今どきのOAを使いこなせず、部下なしの職場で浮き上がってしまうケースも少なくない。
 団塊の世代が境界線になるが、ワード・エクセルを使いこなせない人種の知恵だけ、口だけの労働を価値あるものにしていくのはコストがかかる。
 また、定年延長は産業構造の延長も意味する。本来ならば、社会サービスや農業など人手不足の産業に労働力をシフトさせるべきであるのに、元の産業に5年間大量にとどめ置くことになる。
 こうしてみると、単なる定年延長は企業にとっても個人にとっても、あるいは社会にとっても好ましいばかりとは言えない。
 5年分の労働力の全部または一部を新たな成長産業にシフトさせた企業には奨励金を出すなどを検討し、高齢者雇用の新たな方法もあるはずだ。
 定年延長は、長寿社会には望ましいことだが、同時に、社会の需要に応える形で行われるようにすべきである。

日々雑感一覧