日々雑感

エネルギー転換

 先週、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏のお話を聞く機会を得た。氏は紹介するまでもなく、自然エネルギー開発の第一線に立つ。
 今回の話で、一番驚いたのは、太陽エネルギー、風力エネルギーが技術革新によって、既に電力供給力としてもコスト的にも主流の地位を獲得しつつあるというメッセージだ。自然エネルギーのボトルネックは、常に供給力とコストの問題であり続けたからだ。
 ドイツでは2014年、風力、太陽光、水力、バイオマスによる電力供給は全エネルギーの27%に至っている。日本では、現在原子力発電が止まっているため、火力発電88%、自然エネルギー12%である。
 エネルギーは電力だけではなく、その熱も使われている。デンマークでは、エネルギーミックスは、自然エネルギーが27%、残りが化石燃料であり、地域暖房に木質バイオマスを使い、熱効率を上げている。
 さらにデンマークでは、従来の大型火力発電から、地域分散型の「コジェネ風力発電」に切り替え、夫々の地域が自らの電力を供給するシステムを作り出した。
 日本でも、これをモデルにして、全国で「ご当地エネルギー」が立ち上がっている。自らエネルギーを作り、自らの産業を発展させるのは、限界集落が増え、多くの地域が消滅すると書いた「増田リポート」への有力な処方箋になろう。
 自然エネルギーが実質的に主たるエネルギーの地位を得るなら、多くの賛同を得るであろう。しかも、エネルギーは大資本のみが供給する考えから、地域の生産要素として低廉に作り出せる仕組みができるならば、まさに地方創生の役割を担う。
 飯田氏のお話は納得のいくものであった。自然エネルギーが「自然に」化石燃料や原子力にとってかわることができる実力を持つのであれば、CO2憎し、原発憎しを政争の道具にしてやらなくてもいいのではないか。左翼運動とつながるとき、正しいメッセージであるにもかかわらず理性を失うと思われる。
 一方、原子力は、加速器を使って陽子線・中性子線のがん治療が進んでいる。これまでの放射線治療と異なり、一回で、しかも副作用なくがん細胞を僕滅させる技術である。原子力憎しが、原子力技術までも否定するようでは、社会の進歩はない。

日々雑感一覧