日々雑感

経産省の役割

昨日、農水省の研究開発オープンイノベーションの新規政策と経産省の農商工連携植物工場・輸出産業支援制度を聞く機会を得た。
 農水省の新規政策はいわば農水版科研費の創設だが、科研費と違い、対象は個人ではなく、グループ、研究所、法人、自治体などであり、オープンイノベーションで競争的資金を勝ち取る方式だ。民間に開発意欲をもたらすのには良いアイデアだが、農水省の意図は何か。食料自給率をあげたいのか、輸出産業を育てたいのか、健康食を推進したいのか。また、そもそもの農業後継者不足や耕作放棄地など喫緊の課題とどう結び付けていくのか。
 農水分野はグローバリゼーションの中で外圧を受けてきた。そのため、農家を守るだけの「ダサい」役所から国際派も出てきた。今回イノベーションに意欲的な政策を掲げたのも農水省の置かれた立場をよく表すが、目標と理念型が不明だ。戦前は農商務省で殖産興業の要を背負っていた歴史を思い起こし、もう先送りをしている場合ではない、日本の農業の目標と理念型を掲げてほしい。
 経産省は、意識的に他省の分野を「侵す」傾向がある。農商工連携で、人工光などを使う植物工場や先進輸出産業の支援をしている。本来なら、農水省の仕事ではないかと思うが、農水省や厚労省などは、安全・衛生の確保が第一であり、規制の部分が大きいので、なかなか前に進めない。だから、経済成長に乗り遅れては大変だと、経産省が、迅速で荒っぽい仕事を引き受けることになる。
 厚労省の分野でも、医療機器や福祉機器への対応は経産省が早い。産業政策において、経産省が次に狙うのは医薬品の分野かもしれない。トランプ米大統領が、地球温暖化やがん・ワクチン政策に否定的な見方をしているのは、日本にとってチャンスである。ブッシュ時代にキリスト教原理主義がアメリカの生命科学の研究を遅らせ、シンガポールに研究者が逃げて行った。日本は、今こそ、山中先生のiPS細胞などを使って生命科学でアメリカを追い越すべきではないか。
 規制から入る厚労省ではなく、イノベーション第一の経産省が政策を先んずると思う。昨日話を聞きながら、そう思った。
 (明日2月1日から6日まで、韓国で行われる科学会議等に出席のため、ブログをお休みします。)

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