日々雑感

身近な未知アフリカ

 アメリカ、ロシアを追いかけて、中国、インドも宇宙開発競争に参加している。日本も技術の国の面目をかけて負けじと、最近のH3ロケット打ち上げ成功や小惑星探査機はやぶさの活躍等、人々に知られるようになった。宇宙産業への投資が2030年には倍増すると言われているが、いかんせん、日本の予算は少なく、民間の参入が限られてもいる。
 宇宙は人類にとって未知の代表だ。しかし、地球上にも未知はたくさんある。南極だって、深海だって未知だらけだ。人間社会に注目すれば、日本にとって最も未知な国々はアフリカではないだろうか。近日、多谷千香子法大名誉教授のアフリカ・マリ共和国のお話を聞く機会を得たが、先生は「日本で、マリ共和国って南米の国ですかと質問された」と苦笑していた。
 筆者もそのたぐいだ。半世紀も前に「マリ共和国の花嫁」なる本を読んで、マリに嫁いだ日本人女性の「珍妙」余りある経験を大声で笑いながら読んだくらいだ。マリ共和国は、戦後、フランスから独立し、民主主義国として存在するものの、リビア内戦をきっかけにイスラミストの流入によって、今、国分裂の危機にあるという。
 筆者の関心は戦況や政治の情勢にあるのではない。社会政策を業として実践してきた筆者は、日本にとって、将来の人材導入をアフリカに求める可能性を探りたい。日本はもちろんのこと、先進国は少子化で人口減少を余儀なくされ、南米や東南アジアなど中進国も少子化現象が始まっている。
 日本が実質的に移民労働力として扱っている技能実習生は年38万人入国しているので、日本は世界4位の移民大国にである。技能実習制度は廃止する方向だが、形を変えて維持しなければ日本は人口減少に耐えられない。この制度ではかつて中国人が入ってきたが、中国本土での経済発展により来なくなった。今は、ベトナムやネパールが多いが、円安の影響で、日本で働くうまみが大幅に減少し、やがてアジアの国々からの人材獲得も難しくなりそうだ。
 そういう状況の中で、アフリカだけがすべての国がたどる人口現象と異なり、人口を増やす一方である。要因には複数婚、一夫多妻制の社会であることが挙げられるが、アフリカは、天然資源とともに人材の宝庫にもなろう。日本は、アフリカの豊かな資源獲得に、欧米や中国の後塵を拝しているが、人的資源の獲得は、いち早く人口減少が始まった国として、着手を遅らせてはならない。
 アフリカは欧州が競って植民地化したが、マリ共和国を含むサヘル地域のように特にフランス植民地圏は低開発国にとどまっている。アングロサクソン系は少なくともインドで鉄道、学校、官僚制度などのインフラ整備を行った例もあるが、アフリカのフランス、南米のスペインなどのラテン系は搾取だけに執心した感がある。現在においても、マリ共和国はフランスの介入失敗で、ますます情勢は悪化していると言う。
 日本は、人口減少という必要性から、植民地時代からの歴史や責任を持つ欧州に対抗して、アフリカになにがしかの貢献ができる時が来た。宇宙よりももっと身近な未知アフリカへの挑戦を促したい。 

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