国民国家への道
トランプ大統領は、コミー前FBI長官の議会証言に追い詰められている。メイ英国首相は、賭けに出た総選挙に失敗し、与野党に追い詰められている。そして、安倍首相は、とうとう加計学園問題で、無いと強弁してきた文科省メールの再調査をするまで追い詰められた。
世界がグローバリゼーションから国民国家へと後戻りする(経済学者水野和夫の言う閉じた帝国)中で、グローバリゼーションを担ってきた大国が国内問題で喘いでいるのが現況だ。日本は、天皇退位の法律が通り、早晩、「平成の仕切り直し」のチャンスが確実にめぐってくる。まさに、国民国家日本が新たな姿を示す時が来た。
初めから象徴天皇として即位した今上天皇は、ついに昭和天皇を超えた。戦争と復興・経済成長の激しい時代を生きた昭和天皇は、国際社会では、長らく戦争責任を問われていた。今上天皇は、其の後の「失われた30年近く」の難しい時代に、律儀に戦争の遺族に仕え、災害や閉塞感の中に生きる人々を激励した。象徴天皇とは何かを身を以て作り上げたのが今上天皇だ。天皇とは、皇室とは、民への祈りであり、近代化した今上天皇は分かり易い形で示した。
退位法の所管大臣は菅官房長官。この仕事を終えたのだから、次はご自身の「退位」ではないか。森友学園、加計学園にみる「斡旋政治」の責任を取るべきだ。安倍総理一強を守りたいと思うなら、菅官房長官が「私が皆忖度しました。総理は真っ白です」と幕引きを図るのが一番賢い。
国民国家の基礎は内需と社会保障だ。そのためには、日本は人口の維持を真剣にやっていかねばならない。合計特殊出生率が同じく低いドイツはここ数年で人口10%にあたる移民を受け入れ、EU経済で独り勝ちしている。米英日が追い詰められている中、一時は移民のやり過ぎで批判を浴びたメルケルは今秋の選挙で4選が確実視されている。
21世紀がグローバリゼーションから国民国家へと戻るなら、日本はドイツに負けない方法を考えねばならない。フランス、スウェーデンのような徹底した家族政策は、団塊ジュニアが40歳代となった今では遅い。どういう方法をとるのか、新時代の最大の課題とすべきだ。