どうなる自然エネルギーの国策
自然エネルギーのAPECワークショップが一昨日、東京で開かれた。主に木材ペレットの専門家が集まったが、同じバイオの分野で水素エネルギーの話も盛り込まれた。太陽光と風力の話が多い中で、「他の」自然エネルギーがどれだけ期待できるか興味がそそられた。
ヨーロッパは、カナダなどからペレットを買い、暖炉にくべて暖をとる。だから、その需要は大きいが、日本の需要は小さい。木質ペレットは化石燃料に比較してCO2排出がきわめて少なく、クリーンエネルギーの有望株だが、日本ではまだ存在感がない。
水素エネルギーは、しばらく前に東大名誉教授の安井至先生から、これからはCCS(石油などから炭素を地中に残して水素を取り出す)の時代が来ると、ある会合で学んでいたが、水素の生成についてはさまざまの方法があることを今回知った。ペレットからも生成できるが、家畜の糞や汚泥も資源となる。このことは、資源小国の日本にとって、大切な情報だ。
水素エネルギーと言えば、世界に先駆けて水素カーを2014年に生産したトヨタだが、水素ガスステーションの整備が不十分で、今のところ足踏み状態。最近、経済誌がこぞってEVカー、つまり電気自動車の特集をやり、あたかも水素カーが苦戦しているように書いている。走行距離などでEVカーに勝る水素カーだが、水素ステーションなどのインフラ整備は国策によらないと難しい。
その意味では、中国は、自然エネルギーを国策として大々的に推し進め、それこそ水素エネルギーなども下手すれば日本のお株を採られてしまうかもしれない。一時期は日本がトップだったこともある太陽光発電は、今や中国の世界におけるシェアがダントツだ。APECワークショップでは、オランダ人の研究者が「自然エネルギーの分野は、まだマーケットが熟していないので、補助金などが途切れれば需要がガタ落ちになる」と、実際にオランダの例を数字で示した。どこの国も、今の段階では、国策として支援を受けることが必須だ。
会議に出ながら、原発再稼働を百歩譲って認めても、日本の自然エネルギー推進の国策はあまりにもスローではないかと焦りを感じる。共産国家のメリットを活かし、習近平独裁が進む中で、決断の速い中国に日本は負けていく。会場で中国人の発言を聴いていてもそう思った。
1969年、故障のため月の一歩手前で引き返したアポロ13号が当時のアメリカの科学水準の高さ、プロジェクトへの真剣さを世界に知らしめたように、日本も、死力を尽くしてでかいスケールの科学で、世界を圧倒してほしい。宇宙太陽光発電はどうなったのだ、深海の水素化合物エネルギーはどうなったのだ、もっと現実的な課題として、水素ステーションは? 海藻エタノールは? この分野の国策は明快に、迅速に実行せよ。
政治の世界は、またしても、何の専門性もない、選挙博打で勝ち上がってきた人々を国会に送った。希望の党の転落劇は、モラル欠如のプロセスを暴露したが、他の党も劣化している。官僚もまたこの10年の政治屋政治に飽き飽きして劣化し、一体誰がエネルギー問題を引っ張っていくのか分からない。
国を憂えて、APECワークショップの会場を後にした。