日々雑感

保育から教育無償化へ舵を切る少子化対策

    大義なき解散と言われつつ選挙に勝った安倍首相は、余裕綽々でトランプ親子を歓待し、他方、暗転して「失望の党」となった希望の党は共同代表に玉木氏を選んだ後も、見るからに愚図愚図している。かつて村山首相の社会党は自民党にすり寄ったことで、自らのアイデンティティを自ら潰して斜陽党になった。民進党出身者も、アイデンティティを押し殺して自民補完勢力を選び社会党と同じ運命を選んでしまったね。
 もうしばらくは面白いこともなさそうなので、この話はやめることにし、瓢箪から駒、ともいえる安倍首相のにわか公約「消費税引き上げ分を使って、2兆円の教育無償化」に焦点を当てよう。選挙の大義に使うために持ち出した政策かもしれないが、かねてから、少子化対策のネックは、保育所に偏り過ぎ、子供を持つ負担で一番大きい教育対策は望まれていた。
 大学教育の無償化は既に反対も多く、財源も大きいため、先ずは幼児教育の無償化から始めるようだが、認可保育所の保育料の自己負担分が真っ先に対象になっている。保育は福祉であり、教育ではないとさんざん知らしめてきたのに、しかも、教育を担う幼稚園の存在理由はそこにあったのに、あっさりと保育を「教育」にしてしまうとは、さすがに官邸中心政策だ。専門的な議論がなされていないボロが既に見えている。これをやるには法改正が必要だ。
 民主党政権時代のこれまた「にわか公約」のひとつ、高校授業料無償化は、結果的には、金持ち優先施策になった。低所得家庭の授業料は既に自治体が援助していたからである。今度も、福祉は応能負担なので、保育料自己負担無償化の恩恵を受けるのは金持ちだ。また、幼稚園も自治体の補助が既に大きく、無償化しても、喜ぶのは自治体だけで、家庭の方では大した負担減にはならない。
 自民党の超人気者小泉進二郎議員は、こども保険(介護保険のアナロジー)の主張者のためか、安倍首相が教育無償化予算2兆円の中、3千億円を財界に依頼したことを怒っている。財源を始め、党内議論がないのを指摘しているのだ。しかし、党内議論ばかりか、各省議論もなく、官邸にいる前のめり元通産官僚が皆政策を作っているのだから、そういうことになるよ。通産省の歴史を辿れば、高度成長が終わってからは、思いつきのカタカナ政策ばかり打ち出して、内容の甘さで皆消えていったではないか。シルバーコロンビアだの何だのと。
 幼児教育の無償化だけで、以上のように問題だらけだ。全国に800近くもある4年制大学の無償化などしたら、レジャーランドと言われてきた大学が18歳入園の保育園になるだけの話だ。かつて、我々若いころの国立大学授業料は月千円。親の仕送りなしで暮らしている学生が多かった。しかし、世襲の国会議員で高い月謝の大学を出た連中が国立大学優遇を「是正」してしまった。欧州の大学で無償化が実現しているのは数少ない国立大学しかないからだ。レベルも高い。形だけ欧州の真似をしても、この国の現状では、効果が期待できないばかりか、財源が確保できない。
 少子化対策とは、終局、人口政策であり、もう隠す必要はない。だとすると、金の使い方によって人口が増加する層に重点を置くことだ。国全体としては、公教育だけで良質の教育が与えられるような体制を取ることが先決であり、低所得層に最大限の配慮をし、「カネがないから学校に行けない」国にしない。
 保育から教育に舵を切った少子化対策については、正しい選択である。方法論を詰めていくにあたって、文科省も、もう加計学園なんかどうでもいい、官邸から教育無償化の問題を取り返して、国家百年の計を立てよ。

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