日々雑感

北欧のバイタリティに学ぶ

   今週、仙石慎太郎東工大大学院准教授の「バイオクラスターの北欧モデル」についてお話を伺う機会を得た。北欧のメディコンバレー(ライフサイエンス産業集積)を検証し、条件が近い関西のメディコンバレーとの比較を論じた。
 北欧メディコンバレーはデンマークと南スウェーデン地域を擁し、デンマークだけでもGDPの5%を占める巨大なビジネスである。コペンハーゲン大学、ルンド大学(スウェーデン)、それにビールで有名なカルスバーグ社を始め400社が中心となって造られたこのバイオクラスターは、MVA(メディコンバレー同盟)と呼ばれる参加企業から成る集団がガバナンスを行っている。
 つまり、民間から、地域からすべてが造られたクラスターであり、仙石先生のご意見では、特にカルスバーグ社の力は大きいとのことである。デンマーク、スウェーデンの両国から5年間の公的資金コミットメントを得たのはひとつの成果だが、基本は、民間・地域の自立運営である。
  関西メディコンバレーも企業が中心で動いている。大阪、京都、神戸の広域にわたるこのクラスターは、歴史的に大阪の薬種中買業、京都の精密加工業、灘の酒造業を活かして発展してきた。経産省の産業クラスター計画、文科省の知的スラスター造成事業の対象でもあるが、地域産業、地域行政が主導で進められてきた。
 これまでの日本全国のクラスターについて見ると、特区方式も含め、地元企業の主導が成否を決めていると思われる。成功している中で、けいはんなも然り、北九州も然りである。逆に言うと、つくばのように国の資金だけを当てにして企業参加の弱い地域は、クラスターが成功することはなかった。
 明治以降、藩閥政府が西日本から出てきたせいもあって近代日本の経済発展は西日本を中心に作られてきた。東日本、特に東北はインフラ整備で大きく遅れた。そのことが、東と西の現在のバイタリティの差をもたらしている。東日本大震災の回復の遅れも、この理由で語られる。
 翻って、欧州では、北にあって小国であるはずの北欧が、社会保障でも、教育でも、環境でも、開発援助でも、そしてメディコンバレーに見るバイオ産業でも、トップを走る。北欧のバイタリティはすごい。冬は午後3時くらいから真っ暗になる重苦しい国なのに、人々の合理性とバイタリティはすごい。日本の東北も、元気を出そう。東北は、人口減少が激しく、インフラ開発、社会開発に貪欲さが足りない。
 東北が日本の北欧となったとき、日本の新たな発展が始まるだろう。

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