日々雑感

気候変動神話

    今般、1995年ノーベル化学賞受賞者であるマリオ・マリナ カリフォルニア大サンディエゴ校教授の「地球の環境病に対する処方箋」と題する講演を聴く機会を得た。彼のノーベル賞は、CFC(過フッ素化炭化水素化合物(スプレー等))がオゾン層を破壊すると予知した業績に対して与えられた。当時は一般によく知られることになった地球環境への警告であった。
 マリナ教授が淡々と語った生物多様性の減退、森林喪失、プラスティックゴミ、海洋廃棄物、北極海の氷解などは既に知られた事実であり、地球温暖化の危機的数値、風力や太陽光発電などの推奨も対策として現実化している。その意味では、教授のプレゼンは一般向けの教科書的であったが、非常に印象に残ったメッセージがあった。
 それは、マリナ教授が何回も強調した「気候変動神話」である。3つから成る。①多くの専門家は気候変動と人間の活動は関係ないと信じている②仮に気候変動が今世紀末に起こるとしても、良き方向になるだろう③コスト問題があって化石燃料の規制は明らかにならないだろう。つまり、楽観主義が地球の病を治すことに立ちはだかっていると教授は語った。
 他方で、マリナ教授は、気候変動学者の中で、変動の証拠に懐疑的な人は3%であるとも語り、彼の示す処方箋がパリ協定にも含まれ、実現していくことに安堵している。私は、トランプ大統領がパリ協定脱退にサインした事実を思い浮かべ、マリナ教授に「政治家が3%の否定的な意見に回ったら、科学結果が過半数の民主主義のルールで取り上げられるわけではないから、どうするのですか」と質問をした。
 科学者のプライドをかけて説得していくとのことだ。この問題は右も左もなくコンセンサスを得てほしいが、いかんせん、環境サヨクの道具に使われ、それが逆にマイナスに働いていることも確かだ。高齢者になられたマリナ教授の話のように、静かに理解を広げていくことの方が物事を実現しやすいと考える。

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