日々雑感

医食同源

 一昨日、農業・食品産業技術総合研究機構の山本万里先生の話を聴く機会を得た。機能性農産物の開発研究を明快に、多岐にわたってご教示頂いた。超高齢社会で高齢者及びプレ高齢者の関心を集め、市場の需要も高い分野である。
 内臓脂肪減少効果のあるβグルカン大麦、認知機能改善効果の玉ねぎ、骨粗鬆を抑制するみかん、抗アレルギー作用のあるべにふうき緑茶など、食品であるだけに、人体で「治験」され、大きな効果を上げていることを知った。ならば、副作用の多い薬など要らないではないか、と誰もが思う。
 確かに、機能性食品は、薬の代替性が高く、また、特定保健用食品(トクホ)と違って、日常食として咀嚼して健康を保つ大きなメリットがある。ただ、いかんせん、機能性食品は高いのだ。先生が示した機能性食品オンパレードの弁当は6000円。これでは、結局保険のきく薬や、錠剤で割安のトクホに負けてしまう。
 先生によると、機能性食品開発の目的は、健康寿命と平均寿命の差約10年を2年縮めるところにあるそうだ。非常に意欲的な目標であり、健全でもある。薬が「治療」を目的にしているのとは大きな違いがある。ガンの治療が放射線や抗がん剤などの対症療法から免疫療法やDNA療法に代わっていくであろうのと似た発想である。
 我々は永遠に生きる生命個体ではない。平均寿命を伸ばすよりも健康寿命を伸ばすことを目的とし、しかも、食べるだけで健康を保つのであれば、生きる喜びも大きい。古の中国から伝えられる医食同源をまさに実現するのである。6000円の弁当が600円になる日を待つ。

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