日々雑感

海洋国家日本は続くのか

 世界で一番肉を食べるのがアルゼンチンならば、一番魚を食べるのは日本である。だから、日本は海洋資源の研究開発に力を入れてきた。しかし、現在、海洋科学の予算を減らしているのは、世界で日本とロシアだけという情報がある。他方で、養殖を始め、猛烈に取り組んでいるのが、またしても中国である。
 一昨日、津田敦東大大気海洋研究所教授のお話を聴く機会に恵まれ、海洋研究は、実にダイナミックであることを知った。2007年までは、アメリカも日本も競って、海洋に鉄撒布をし植物プランクトンを増殖する実験を手掛けた。その結果、地球を冷却し、温暖化を食い止めようとしたが、生態系の問題や地球工学的に非効率などの理由で今は行わなくなった。2008年のロンドン条約で商業的海洋肥沃化は禁止され、日本もそのガバナンスに支配されている。海洋で日本は我が道をなかなか行けない、欧米に制止されることが多い。クジラの例を出すまでも無かろう。
 生態系や生物多様性を強調するグループが特に欧州には多く、その議論は難しい。津田先生自身が「なぜ多様性が必要なのか、人類を幸福にするのか結論は出ていない」と言われる。同席の学究から、「我々は多様なものを食べている。多様性を維持しないと、何かが絶滅した時に我々も死ぬことになる」と教示してくれた。なるほど。
 宇宙も海も知らないことだらけだ。同席の学究から「日本はもはや海洋国家とは呼べない」というほど海洋の研究開発や資源の争奪などで優位性を失っているそうだ。この流れは絶対に変える必要がある。科研費や科学産業化の予算は、社会保障費に比べたら目に見えないくらい小さい。骨太2018では、科学予算に触れていないが、予算配分のダイナミズムが求められている。

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