日々雑感

CE(サーキュラーエコノミー)とは

 最近、物財研名誉研究員でありサステイナビリティ技術設計機構代表理事の原田幸明先生の話を伺う機会を得た。かなり難しい内容だった。
 日本は、70年代のオイルショック以来、省エネ化に成功し、その先端技術を担ってきた。80年代の日本独り勝ちはまさにその日本の取り組みによってもたらされたと言っても良い。世界はキャデラックから日本の小型車に代わったのはいい例だ。
 そもそも日本は、江戸時代に物の修繕や人糞の肥料化など世界にも注目される循環型社会を作っていた国であるから、省エネやリサイクル技術が得意な民族であったわけだ。
 ところが、今年9月、フランスの提案によって、ISO(国際標準化機構)でCE(サーキュラーエコノミー)の標準化が採択され、日本やアメリカは反対したが、90年代から資源効率の改善を意識してきた欧州に日本は座を奪われた状況になった。事実、90年代は日本が見本とされていた資源効率は、近年、欧州に負けるようになった。
 原田先生によると、従来の「循環」型社会から分岐し「CE]がそのまま使用されているが、実際に、この二つは根本的に異なる。単に資源を循環させるにとどまらず、CEは技術を投じて多様な付加価値を生むという発想である。
 「循環」との違いは、さらに、欧州でよく使われるデカプリングの方法が使われているところにある。カップルを切り離すと言う意味のこの言葉は、具体的に、経済成長と環境負荷の増大はカップルであったのを、環境負荷を増大させずに経済成長をもたらそうとするものである。
 欧州では、長らく農業のデカプリングとして生産と切り離して所得補償をする制度を行ってきた。まさにその方法論である。日本では、欧州の制度を採り入れ、民主党政権の重要な政策の柱とし、農業者所得補償制度を導入したが、立法化できず予算措置にとどまり、持続する政策にはならなかっという例もある。
 CEにおいては、循環が再資源化や最終処分の減量に留まるのに対し、リビルド、リペア、直接使用などを通して物の残存価値を徹底的に引き出す。また、PAASと言って、製品を売るのではなくサービスを売るのがCEである。原田先生曰く、従来ならば、何かを切るためにはハサミを買うという発想になるが、実は「切る」というサービスを買うのが直接的欲求に合っている。つまり、物の丸売りではなく、その機能、そのサービスを売るプラットフォームを作るのがCEの役割である。
 海岸に打ち寄せる大量の使用済み製品を思い浮かべるとき、CEは夢の解決方法のようであるが、実際に解決する技術力に到達するか、難処理廃棄物を拡散させないかなどの問題があると原田先生は指摘する。
 カタカナ政策やローマ字政策は今まで成功したためしがない。企業が成長して行政指導が不要になった旧通産省では、80年代やたらにカタカナ政策が打ち出されたが、筆者が知る限り成功した例は聞いていない。だが、CEは、学問的にも政策的にもコンセプトの土台が堅固だ。日本はISOでの採択に反対したが、日本語で噛み砕いて分かり易いものにしたら政策的に使えるかもしれない。政府が推進している「ソサイエティ5.0」も分かりにくく人口に膾炙しないが、これもまた世に伝える役割を、政治家や官僚にもたせるべきではないか。
 難しいが、CEをもっと学ぼう。

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