日々雑感

韓国の先にある中国

 韓国の曹国法相が辞任して、いよいよ文在寅政権は危機状態に陥ろうとしている。この状況は、筆者が民主党政権に与していた時代に酷似している。民主党(当時)は、政権交代を頂点に党勢が日々下り坂になり、辺野古基地移転問題、尖閣諸島中国漁船衝突事件、東日本大震災における福島原発事故の対応などで目くるめく拙劣さを表し、野田元首相のヒステリー解散を極め付きにして総選挙で惨敗を期した。文政権は最早この轍を踏む以外の何物でもない。

 実は、文政権と当時の民主党とは外交政策が似ている。文大統領が目指すところは、大国アメリカと中国との間に立って、韓国がバランサーとなり独自外交を築きたいのだ。旧民主党も脱「アメリカ一辺倒」で中国寄りを重視していた。韓国の場合は、バランサーとなる手段として、北と統一し、人口7千万の大国を作って、北の資源、南の技術を以て繁栄を目指す。むろん、文大統領だけでなく、朴槿恵前大統領も、保守政権とは言え、中国に近づいて米中の間に入る外交を試みていた。しかし、文在寅大統領の場合はあからさまにその意図を表明しているのである。

 米中貿易戦争が真実には大国の覇権争いであるという認識は定説化している。それを知らぬかのように、文大統領はGSOMIAの廃棄など、アメリカの虎の尾をわざわざ踏んで危険極まりないことをやっている。アメリカが文大統領の意図を許すわけがない。

 他方、文政権が本気で中国に近づいているかと言えば、そうではあるまい。そもそも歴史上中国大陸の王朝の属国だった韓国やベトナムは中国を好ましい存在と思っていない。米中両大国のバランサーになろうとするのは理想的過ぎて、リアリストが占める国際政治の世界では不可能と言うべきなのである。

 その点では、安倍政権のように、日米同盟を強固なものにし、貿易協定では、譲歩しすぎるほどアメリカに従順であるのは、国際政治の舞台では現実的で正しい方法なのだ。国際関係は理想を掲げる場ではない。旧民主党と同様、文政権はそれを知らないと見える。

 さて。最近、北京、重慶などで事業に大きな成功を収めた中国の一行に会う機会を得た。中国は今、アメリカに譲歩するよりも踏ん張って、2020年代後半にはアメリカのGDPを抜き、IT、AI、5Gの分野で世界トップを目指している。一党独裁で政府の決断が早く、成長産業には国のバックアップも得られたため、事業の成功者は、桁外れの富も得ている。

 しかし、意外だったのは、成功者たちが口をそろえて、少子高齢社会に進む中国の次のビジネスは介護事業だと言ったことだ。実際にそのために日本に視察に来ている。筆者は数年前、中国で介護施設や介護士養成学校を作るための日本側の仕事に若干かかわったことがあるが、中国の老人ホームは、台湾資本などが多く、要介護に至る前の「老人の遊び場」というコンセプトである。したがって、老人ホームは終の棲家ではなく、最後は自宅で死を迎える。つまり、日本の介護施設などを見学しても役に立たないのである。

 中国が少子高齢社会で目指すビジネスは、高所得階層に限られてくる。なぜならば、介護保険も医療保険も整備されていないので、老後には、膨大な金がかかるからだ。他方の少子化のほうも、2015年に一人っ子政策が廃止され、共産党幹部などは2人生むように奨励されている。しかし、教育費が大きいので、一般の人は2人生みたがらないと言う。なぜなのだ、共産主義国ではないのか。医療も教育も金がかかりすぎると言うのが共産主義国の悩みとは理解できない。
 
 韓国人も中国人も、我々と同じモンゴロイドで顔は似ている。しかし、お互い理解し合えているとは思えない。むしろ、筆者がかつて住んだ、アメリカやインドの方が、知識人の学問がアングロサクソンのものであり、日本と共通しているため分かりやすい。ただ、韓国と中国を比べると、日韓は、違いが強調される傾向があるけれども、共通点がはるかに多く、上述した外交でも見たように、今の韓国と旧民主党は相似形だ。それに対して、同文意識の強い日中は、ほとんど共通点はない。まったく違うと思って付き合った方が、無駄な軋轢は生まない。

 どうせ同じ顔をした我々なのだから、韓国とはそこそこ分ろうと努力し、中国とは絶対分かり合えないが共通の利益をみつけていくという姿勢が必要だ。

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