コロナよりも長期トレンド
「毎日がコロナ」の日々が続いている。日本では、東京を始め第二次感染の到来を恐れつつも経済回復に政治は乗り出す。安倍政権は喫水線が上昇し、盛り上がらぬ都知事選をよそに、次の政権論が盛んである。
世界ではアメリカの大統領選と米中関係に注目が集まる。トランプはコロナで感染者260万(世界1000万)、死者12.8万(世界50万)を出しつつも、選挙を意識して経済回復に力点を置く。中国は、トランプの敗北を期待しつつ、経済は低迷、にもかかわらず、インドとの軍事衝突、香港国家安全法の制定などアジアでの覇権を誇示しようとしている。尖閣列島周辺に頻繁に公船を通航させているのも、日本に対する挑発行為である。
現時点で日本がアメリカについていることは明らかであるが、欧州は、中国を警戒しながらも、その大きな市場を意識して、即欧米連合に傾くとは限らない。日本も民主党のバイデンが大統領選に勝った場合、対米政策の修正を余儀なくされるかもしれない。トランプに偏りすぎた日本をバイデンはどう扱うか。そのトランプにおいても、ボルトン元補佐官の回顧録では、トランプが安倍を好意的に観ながらも、日米安保の片務性について言及している。
この世界の動きはコロナがもたらしたものか。否である。長期トレンドの一部でしかない。太平洋戦争敗戦は日本を劇的に変えた。では、オイルショックは?ソ連崩壊は?アジア経済危機は?対テロ戦争は?リーマンショックは? 世界共通経験が日本を変えてきたことは確かだが、国の土台まで変えたのは敗戦だけだ。コロナショックもまた長期トレンドを強調的になぞる変化をもたらすであろうが、土台を変えるのではあるまい。
むしろ、さまざまの国際的事件の背後に、日本を長期的に変えてきたものがある。それは、人口構造である。これこそが社会を変えた。超高齢化、少子化。財政超過と需要の落ち込み。90年のバブル崩壊は、89年1.57ショックの直後に起きた。少子化の門をくぐった日本は、以降は、バブルを支える人口はありえないのだという事実を突きつけられたのだ。
人口構造は家族を徹底的に変えた。戦前の価値を持った人口が減るにつれ、典型的と考えられてきた家族は大きく低下した。何が典型かは時代によって変わるべきだが、家族の存在そのものが否定はされていない。それどころか、コロナ禍で、家族の存在が再認識されている。今こそ、家族のための政策が必要である。
経済では、GAFAが上昇して、重工業が苦戦する。日本の人口構造が求めているものはGAFAが提供し、重々しい工業製品ではない。その長期トレンドを読み、何よりも、家族を支え、人口を増やす政策を行わねばならない。それこそが、ポストコロナ社会に求められる政策だと信ずる。