日々雑感

「不妊治療が少子化対策」は、男の視点

 自民党総裁選候補者3人の討論会が始まった。全体的に目新しいことはないが、こと少子化対策については驚き、寒心に堪えない内容だった。石破氏は抽象的、岸田氏は通り一遍、菅氏は少子化対策の目玉として、不妊治療の保険適用化を挙げた。
 少子化対策とはいかに赤ん坊を生ますかだと菅氏の頭では考えている。不妊治療と中絶禁止の議論は、少子化の背景を踏まえた制度作りよりも、赤ん坊が生まれさえすればよいという短絡的で、生み育ての責任を回避しがちな男の視点そのものである。
 不妊治療の保険適用はそれに苦しむ人には朗報だが、それは、不妊を疾病ととらえ、健康保険の適用を制度内で検討すべきことであって、少子化対策の目玉ではない。少子化対策は、生んでからこの国の労働力となるまでの制度全体を向上させるべき政策なのである。
 その上、既に専門家が発言しているが、もしこれを少子化対策と主張するならば、団塊ジュニアが出産適齢期である90年代に行うべきであった。保険適用の検討は結構だが、少子化対策としては時季外れも甚だしい。
 少子化対策は、今や国民的課題の第一に挙げられてもおかしくはない。しかし、日本の総理になろうとする候補の討論会で認識の低さが露呈した。残念ながら、女性活躍も少子化対策も今後当分期待できない分野となった。国の借金、消費不況と相まって、日本の下り坂は止められまい。

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