下り坂の日本に疫病、地震そして水害
1月のIMFの予測によれば、コロナ後の経済成長率は、世界平均4%である。インド11%、中国8%、アメリカ5%、欧州4%、日本は3%。世界の経済強国の中で、日本だけが平均以下という試算である。日本のコロナ対策、オリンピックの海外からの無観客、国の借金上積みなど、海外の日本を見る目は厳しい。加えて、森元総理の女性蔑視発言は日本を揶揄する好機を与えた。
国内では「すべてパンデミックが原因だから仕方がない」が政治においても世論においても主流で、下り坂で迎えるであろう、これからの新たな疫病、地震、気候変動によってもたらされる台風などの水害について、前向きの議論が聞かれない。しかし、コロナからのレジリエンスには、経済回復だけでなく、あらゆる災害の予防が必然である。さもなくば、安全安心の国はありえない。
今般、水文学が専門の寶馨京大教授のレクを聴く機会を得た。寶教授によれば、高潮や洪水などの水害は、地震に比べると経済被害や人命損失などの数値は低い。例えば、巨大災害による経済被害の試算では、南海トラフ地震が1240兆円、東京湾巨大高潮が46兆円である。
しかし、2019年の東日本豪雨や2017年の九州北部豪雨など、気候変動との関連も考えられる大水害が日本を襲っている。筆者は、鬼怒川の近くに住むが、2015年の鬼怒川洪水は海からではなく山からの洪水が死者14名を出す被害をもたらしたのである。筆者の住むやや上流で決壊したが、その時初めて土地を選ぶときに川の近くを何の考慮もなく選んだ自分の災害に対する甘さに気付いた。
災害対策基本法は1959年の伊勢湾台風を契機として制定されたが、近年の法制度では、河川法、水防法の改正により、住民が危険情報を日常的に知ることができるようになっている。しかし、寶教授は、近年の小さな政府・少ない予算の下では、公助ばかりではなく共助(コミュ二ティの互助)や自助努力が必要な時代になったと言う。
超高齢社会で、日々の健康には大いに自助努力をしていても、災害については「忘れがち」である。公助に期待するものが大きい。国民から見れば「政府はやること一杯で忙しい」「予算がない」は言い訳にしか感じられない。要するに優先順位を高くしないということなのだろう。大地震ももちろんだが、大水害も下り坂の日本に大きな打撃を与えることは必至だ。
2028年にインドのGDPは日本を抜き、日本は世界4位になる。2050年の日本の人口は世界15位に落ちる。大災害が日本を壊滅させるかもしれないことを考えれば、災害対策予算の優先順位は高く上げねばならない。寶教授が挙げた以下の数字は、その必要性を現実的に指摘している。
医療 医師 32.7万人
国防 自衛官22.7万人
防犯 警察官25.5万人
防災 消防士16万人