日々雑感

バイデン政権どこへ行く

 西谷眞規子神戸大准教授による、気候変動から観たアメリカの政治を聴く機会を得た。バイデン大統領は、多様性と人権を掲げ、国際協調を重視して、トランプ前大統領に勝った。もっとも、圧勝したわけではなく、今も根強いトランプファンがいて、次期大統領選は早くもバイデンが危ないと報道されている。
 気候変動については、トランプが脱退したパリ協定に復帰し、バイデンは、気候変動リーダーズサミットでアメリカの排出量とネットゼロ引き上げ(2030年までに2005年比50~52%削減、2050年までにネットゼロ達成)を約し、この分野での積極的取り組みを明らかにした。
 そもそもアメリカでは、民主党が環境保護、共和党がアンチ環境主義で、政権が変わるごとに政策は替わってきた。共和党は、レーガンが環境予算の大幅削減、ブッシュ(父)が1992年の地球サミットで削減目標の導入に反対、ブッシュ(息子)は京都議定書を離脱した。
 民主党は、クリントンが京都議定書に署名したが、議会に批准拒否された。オバマはグリーン・ニューディールを打ち出したが議会と対立した。この間、クリントン政権時代の副大統領アル・ゴアが気候変動に取り組み、ノーベル平和賞を受賞している。また、アメリカでは非政府である企業、団体あるいは州政府がトランプ政権時代にも独自の気候変動対策を講じていて、その活動は大きい。企業ではウォルマート、団体ではセリーズ、州ではカリフォルニアなどである。
 共和党と民主党のシーソーゲームではいささか共和党の方が強いように見える。欧州に倣ってバイデン大統領はEV(電気自動車)のシェア5割を目標にしているが、欧州の目標に及ばない。民主党支持の労働組合の反対があったからだと西谷先生は指摘する。しかも、バイデンの支持率は低下し、コロナ対策の予算も民主党内から反対が出るなど政権運営が厳しい中で、気候変動に積極的に取り組める状況にはない。
 バイデン大統領は、米中政策こそトランプ前大統領を継承したが、一部の知識人に受けるだけの環境政策や多様性のための政策は道険し、である。
 米中覇権争い、コロナ禍、気候変動などグローバルな問題が多い中で、バイデンならずもアメリカだけがリーダーになれる時代が去ったという見方もできる。

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