異端のノーベル賞受賞者モンタニエ博士逝去
去る2月8日、エイズ発見で2008年ノーベル賞を受賞した仏パスツール研究所出身のリュック・モンタニエ博士の死が伝えられた。ここ数年、科学国際会議で数回お目にかかったが、車椅子から、ご老体にも拘らず主張は強固であった。
博士はノーベル賞受賞後、免疫学者として、あらゆる疾病において免疫を高める治療法を勧め、抗がん剤や放射線治療を否定し、予防接種ワクチンの害を主張してきた。博士によれば、自閉症や精神病にも、免疫療法が有効で薬物療法を徹底的に攻撃した。
しかし、その発想は、欧州の民間療法ホメオパシーにつながるもので、大方の医学者の顰蹙(ひんしゅく)を買った。にも拘らず博士の主張は年々高まるばかりで、新型コロナについては、コロナウィルスは武漢で人工的に作られたこと、ワクチンは害毒であることを主張し、世界の政府やマスコミからは背を向けられた。
ただ、ワクチン接種の義務化についてフランスで激しい抗議デモが行われた陰には、自由を信奉するフランス人の中に、博士の学問的裏付けを信奉する一定数の人々がいたことを表している。
ワクチンはアメリカの製薬会社ファイザーとモデルナが世界を席巻し、巨大な利権を得た。イギリスのアストラゼネカ社とオックスフォード大が共同開発したワクチンは及ばず、サラ・ギルバード・オックスフォード大教授は新型コロナ発生前から感染症Xを予期してワクチン開発に取り組んでいたものの、アメリカの巨大利権にかき消された。
政府、世界的な大企業、マスコミのいずれにおいてもアメリカが巨大な権力を誇る。この3つの権力が一緒に選んだ道が「正しい道」あるいは「世界の主流」になる。モンタニエ博士はそれに一石を投じようとしたのだが「頭のおかしいノーベル賞受賞者」と隅に追いやられた。勿論、筆者はモンタニエ博士の理論の是非を語る科学的知識を持ち合わせないが、世界の主流が常に正しいとは限らないのも事実だ。
考えてみれば、2回もワクチン接種しても免疫が足りないから、6か月後にブースター接種をしろというのでは、科学のレベル、為政者の政策に疑いを抱いても仕方あるまい。しかし、我々は、政府、大企業及びマスコミが一体化した大船に乗って(と信じて)行動せざるを得ないのである。
医療、教育、福祉という社会サービスの中で、教育と福祉は一般の批判者が多いが、医療は供給側(医師)と需要側(患者)との情報の非対称性ゆえに正当な批判はできない。ただ、少なくとも、医師の考えを知り、その治療に信頼を置くことが個人に求められ、そこまでの教養水準を保って現代を生きるべきである。異端の医師モンタニエ博士のご逝去に際し強く思う。