日々雑感

燕雀鴻鵠

 史記に「燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや」とあるそうだ。つばめやスズメなど小物は、おおとりや白鳥など大物の志が分からないと解される。我々のほとんどは小物だ。毎日のマスコミの報道を鵜飲みにし、世界のどこかの大物の意図や策略は分かりそうにない。
 アメリカはインフレ懸念だが、ロシアのウクライナ侵攻により、コロナの影響を凌駕して、原油や小麦価格が高騰し、金融縮小(テーパリング)を正当化する。
 そのアメリカは原油にも小麦にも実際には困らない原産国である。バイデン大統領は賢くも、ロシア侵攻前から「NATO」は参戦しないと明言し、実質的にウクライナを救うことができない。原油が無ければ、原子力発電があり、地球温暖化よりも石炭を使う必然性の方が重要になる。戦争はウクライナを疲弊させながら、世界経済は過去回帰になるのではないか。アメリカという大物の意思を知りたい。
 西側諸国が一丸となって、「プーチンの誤算、プーチンは気が狂った」と叫ぶ。チェチェンでも、グルジアでも、クリミア半島併合でも、正気でやり通したプーチンは果たして気が狂っているのか。ウクライナ人の本当の気持ちも、ロシア人の本当の気持ちも我々同質性社会に住む日本人には分らない。だが、欧米メディアの報道以外に接することなく、ロシア語なぞ知っている人やメディアは日本では稀有であることを考えると、プーチンという大物の意図は知りようがない。
 インド、中国、トルコ、イスラエルは、自国の国益を考えた外交を展開している。欧米と足並みを揃えてはいない。インドが安保理事会でロシア非難決議を棄権したり、トルコが仲介を申し出たりするのは、歴史的にこれらの国が「大物」だからだ。
 日本は大物の真似はできない。日米安保条約は最大限尊重しなければならない。しかし、その中でも、物価高騰や北方領土問題など国益に関するものには手を打たねばなるまい。コロナには目の前の感染者を救う義務があるが、ロシア侵攻には国民経済の破綻を救う義務があることを永田町は意識しているのか。与野党ともに、ひこばえ政治屋と職業経験の無い選挙屋の集まりで機能不全となっていないか。ひこばえは軒下に巣くうつばめ、選挙屋は損得で動く竹林のスズメだ。
 小物でもいい、国益だけは自ら決める外交であってほしい。

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