日々雑感

日本の財産を守る

 日本の2%に迫る物価上昇は、言うまでもなくロシア侵攻が引き起こしたエネルギー価格、穀物価格の上昇が連鎖した現象であり、日銀は「決していいインフレではないが、金融緩和政策は継続する」と明言している。ピークアウトに向かうコロナの政策から経済回復政策に舵を切った岸田政権は成功するか。
 現在、税収は上がり、円安状況の中で輸出産業に力点を置けば「日本回復」は望めないわけではないとの議論も出ている。元祖宏池会の池田勇人を信奉する岸田総理としては喜ぶべきなのかもしれない。
 だが、いかんせん、ウクライナ危機の長期化とインフレの進行は国民の生活を圧迫する要素であり、安閑としていられないはずである。この時点で、日本の財産とは何か、守るべきものは何かを点検する必要がある。ウクライナ危機については、単一民族かつ島国の日本が、錯綜したロシアやウクライナの歴史や民族感情を分かるはずはなく、隣接した欧州の思いや、アメリカの真の意図も計り知れない。
 日本は西側諸国の一員として、アメリカに追随し、軍事以外のロシア制裁に加担するのは良しとするしかあるまい。日本はそういう立場なのだから。しかし、改めて、日本が戦後77年間、西側に置かれてきた立場で手にした「財産」をこの機会に一つ一つ見直してみたい。
 先ず憲法。今年の憲法記念日は何事もなく過ぎたが、2015年の安保法制の議論で、既に憲法どうあるべきは決着がついたのであろうか。確かに安倍元首相のいつもの舌足らず癖は目立ったが、憲法学者が徒に難しくした集団安全保障は確認されたのであり、これは憲法制定当時の国連憲章などを参照し、法律というよりも政治的に内包された制度として受け止めざるを得ない。
 日本の輸入品財産の中、憲法は良質な輸入品であり、自力では作れない代物だったから、少なくも基本は大切にすべきである。他の輸入品である、民主主義はどうか。国際社会においては、立派に日本に根付いた価値と公言できるが、日本国内ではかなり変形されている。世襲政治がまかり通り、民主主議の方法論を利用した貴族政治に堕しているところは、不良な輸入品である。フィリピンでマルコスの息子が大統領になるのと変わらぬネポティズム(血族主義)が政治と政治の息がかかった大組織に厳然と存在している。
 同様に、輸入されたジェンダー論も一度も勢いづいたことがない。民主主義と同様に、上から与えられたウーマンリブを押し頂いた日本は、ジェンダーギャップ世界120位と先進国では考えられない位置にある。日本の女性はそもそも欧米の、あるいは開発途上国の女性の活躍を少しも羨ましいと思っていないのか。もともと自ら求めもせず、与えられたから、政府主導のジェンダーギャップ政策に乗ってきただけなのか。これも不良な輸入品である。LGBTQも然りである。日本の草の根から発した価値でないものは、大成しない。
 社会保障制度はドイツの社会保険制度を真似て発展してきたが、これは胸を張れる日本の財産だ。問題は、子供の保障はこれでいいかとの観点だ。大伴家持に言わしめた「勝れる宝、子にしかめやも」は、古来、日本が子供を大切にしてきた財産であることを語っている。その財産を産もうとしない民族になってしまったのは、政策の悪さが響いている。
 ウクライナ危機、知床の観光船事故、虐待で、最も心痛むのは、子供の死である。乳幼児死亡率が世界的に下がり、医療は高齢者をいかに長生きさせるかに軸足を置いているが、究極の政府の役割は、国民の夭折をなくすことである。だから戦争も、事故も、乳幼児への犯罪も避けねばならない。
 輸入品でない日本の財産の第一は、子供である。財産を増やすべく、人口政策に取り組み、かつ、輸入品の価値については、日本流に変えていく努力を必要としている。

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