自民党の運命は鎌倉殿
久しぶりに見る大河ドラマである。鎌倉殿13人は、脚本家三谷幸喜氏の才能躍如により、現代政治につながる面白さを伝える。
頼家と実朝は源頼朝嫡出の長男・次男である。二人ともいわば現代流の世襲政治家である。18歳で武士の棟梁鎌倉殿に就いた頼家は、父の壮絶な人生を真似ようにも経験不足な上、周囲をないがしろにして、終局は外戚北条氏によって暗殺される。
次男実朝は12歳で鎌倉殿になり、政治は任されず、歌に耽る。名歌を遺したものの、甥の公暁に暗殺される。源氏の支配は三代で終わり、北条の執権政治が続く。これを現代に当てはめれば、世襲政治家が政府を追われるドラマである。
頼家は安倍晋三である。岸信介が子々孫々のために築いた政治家業と巨大な政治資金を受け継いだ安倍はひたすら岸の遺言を実行しようと努めた。しかし、頭脳明晰かつ満州の妖怪と言われた策士である祖父に遠く及ばず、凶弾に倒れた。
実朝は岸田文雄である。三代続く世襲政治家であり、宮澤喜一の甥である彼は、ジェントルマンである。歌を詠むほどの文化人ではないが、安倍よりはいささか勉強している。安倍暗殺事件に恐れおののいたか、国葬を決め、内閣改造でも安倍派への配慮を明確に示した。
退屈極まりない派閥均衡新内閣の上に、新しい資本主義のキーワードのかけらもない施政ぶりで、岸田政権は支持率を落としている。政策集団であった岸田率いる宏池会は死に絶えたようである。ウクライナ戦争後の、コロナ後の日本をどうするのか不明であり、いつどこから公暁なる刺客が現れてもおかしくはない。
世界はインフレと気候変動への対処を迫られ、核戦争への恐怖をあおられている。頼家・実朝が如き世襲政治家の器量で乗り切れる状況ではあるまい。今年は、世襲政治の終わりの始まりを示唆する年である。同時に、世襲政治を産んできた長州足軽政治の終焉でもある。
しかし、野党に期待はできない。野党は御家人株を買いたがる農民でしかない。武士の華々しさに憧れ、万年野党で高額所得さえ維持できれば良しとする輩ばかりなのだ。自民党よ、今こそ世襲を排除し、150年続く長州足軽政治から脱却し、真実の保守を学べ。自害した西部邁の本でも読むがいい。
筆者の勝手な解釈だが、脚本家三谷幸喜はそのメッセージを伝えているように思える。