焦る岸田首相へ
ようやく勝ち取った首相の座、そのあと衆議院選と参議院選に勝利を収めて勝者の政治を進めるつもりであった。その岸田首相に国葬と統一教会への対応に厳しい世論が向けられている。岸田首相の苦悩は息子を総理秘書官にしたことに現れている。バッシングを受ける中で、身近の人間を傍に置きたかったのだ。
自己の後継者として選んだとも言えるが、一番の問題は、総理秘書官には他に4つの官僚ポストが用意されていて、岸田氏の息子は政務の秘書官としてその筆頭に立つ。官僚ポストは課長クラスで優秀な人材が当てられ、31歳で職業経験未熟な男が上に立つことはできない。彼は政治家とは異なり選挙も経ていない。
総理秘書官は、内閣の参与や補佐官が一本釣りの総理助言者であるのに対し、組織的に官庁から上がって来る案件の処理を行う。いわば総理の代理である。任は重過ぎるはずだ。
しかも、ネポティズム(縁故主義)は安倍元首相の代表する長州政治の伝統であり、これをあからさまに真似ることは、岸田首相が安倍継承を鮮明にしているようなものだ。国葬も安倍継承を表明するイベントだったのではないか。岸信介の後の首相となった池田勇人は岸政治と決別し、経済だけに邁進した。その池田が創設した宏池会を引き継いでいるのが岸田首相なのに、池田とは全く逆方向を取った。
岸田首相も人の子、バッシングの中で歴史を見る目も自分に期待された役割をも見失い、身内に守られたかったのが本音であろう。その不安定さを表すかのように、現在作業中の総合経済政策は、職務給の推進やシリコンバレーへの研修など方法論の集まりであり、でかい柱は見えてこない。池田勇人が草葉の陰で泣いていることだろう。
新しい資本主義を標榜するならば、人口構造の変革と近未来の労働を変える高等教育の変革に裏打ちされた経済政策を行わねばならない。小手先の、いかにも経産官僚的な「ショボいイノベーション政策」を数打っても、低迷した日本経済は立ち直れない。こちらは、一本釣りの参与や補佐官のアイディア寄せ集めではないのか。
岸田総理、目覚めよ。角をたわめて牛を殺すことになりかねない。このままでは日本は死ぬ。人口と教育の政策を用いてこの国の構造を変える経済政策を出してほしい。そして、その前に、国会の赤じゅうたんを外してほしい。赤じゅうたんを踏んで、学問もないくせに「センセイ」と呼ばれて仕事をしない(できない)議員たちを放置してはならない。
パパ活やセクハラが横行するモラル貧困の象徴は赤じゅうたんであり、これを撤去し、世の中を見てほしい。総理、あなた自身も「聞く力」ある庶民を装っていたが、今や総理自身が世の中がを見ていないことが明らかになった。自民党がそれでもまだ今の野党よりはましだと世の中が観ているうちに、岸田総理、目覚めてほしい。