戦い済んで日が暮れて
総選挙は終わった。結果は事前調査の通りで不思議はない、自民党の圧勝と中道の壊滅状態である。小さな煌めきは、チーム未来の躍進で11議席を獲得したことだ。この党だけ消費税減税を主張しなかったことが主因のように言われるが、それよりも若い人の未来にAIを駆使した新たな産業社会を築く夢を与えたことの方が大きいと筆者は思う。自民党の「強い日本」は抽象的すぎるし、国民民主党の「手取りを増やす」は日常的すぎる。チーム未来だけが夢を語った。
高市政権の経済政策が評価されたと言うが、予算の審議はこれからだ。まだ何も始まっていない。だが、高市首相のオバサン的語り口は、官僚口調と正反対で、マザコン男子を納得させる。世のオバサン連中に同朋意識を持たせる。失言も「優しいオバサンが言うのだから許せる」。紋切り型の岸田元首相、口下手の石破前首相は学ぶべきだった。しかし、高市政権は、期待から実行に移る時に、二人の前任者と同じ罠に陥る可能性もある。膨れ上がった自民党という抵抗勢力をいかに処していくか。
先ずは、給付型税額控除の制度創設まで期間限定の食料品の消費税ゼロが実現できるか。そもそも給付型税額控除という、所得が税額控除額に足りないときに足りない分を給付として支払う制度が出来るか。既に導入した欧米諸国も多いので出来るかもしれないが、日本は欧米に比べダントツに政府借金が大きく、実質的に低所得層対象の給付となる政策が自民党の財政権力集団を突破できるのだろうか。制度設計に時間がかかるならば、食料品の暫定消費税率ゼロは恒常的な税収減につながり、抵抗勢力は立ちふさがるだろう。
今回の圧勝はトランプ大統領の祝福を受けたが、トランプ大統領からは「もっと、もっと、東アジアの防衛を質量ともに責任を負え」との「アドバイス」が待っているはずだ。昨年10月、トランプ大統領と並んだ高市首相は、米原子力空母の上で跳ねまわったけれども、今後自民党が一丸となって、跳ねまわれる土台を約束してくれるかどうか不明だ。この際、「瀕死の左派野党」を考慮しなくていいだけましかもしれないが、世論がどう裁くかも未知だ。
道は険しい。戦争の可能性が高まり、格差が広がる世界に日本は例外なく位置している。アメリカが始めた国連に代わる平和協議会、カナダが提唱するミドルパワーの結集や、ASEAN、グローバルサウスとの連携も考慮に入れながらの国の運営をすることができるか。安部一強で長期政権を築いた安部元首相ですら、最も執心した「戦後レジームからの脱却」「憲法改正」に手を付けられずに終わった。選挙によって左派を追いやっても、世界の動向、足元の抵抗勢力、世論の中を高市首相は泳いでいけるか。