日々雑感

米国お爺さん対決の危うさ

 来年に始まる米大統領選挙は、今のところ、80歳のバイデン大統領と76歳のトランプ前大統領が有力候補として名乗り出ている。バイデンはデフォルトを回避したものの、依然としてウクライナ問題だけに忙しいようだ。
 トランプが次々に壊したオバマの業績であるパリ協定、イランの核合意、TPPについては、パリ協定は復帰、TPPは別の経済枠組みの提案に至ったが、核合意は暗礁に乗り上げたままである。
 イランは米国の核合意破棄に乗じて、濃縮ウランの開発を進め、2015年当時の核合意の内容を作り直さねば復帰はできない状況と専門家は言う(坂梨祥氏 日本エネルギー研究所 以下の主な情報も坂梨先生による)。
 その上、バイデンがウクライナ問題に埋没している間、盟友であったはずのサウジアラビアが中国の仲介でイラン・サウジ国交回復の合意を成立させ、イランはロシアにドローンを供与するなどロシアに接近し、中国はイランの原油を買い、インドはイランとの貿易を拡大している。米国にとっては残念ながら、イラン包囲網は崩れ始め、今やイスラエルだけが盟友ということになりそうだ。
 しかしながら、イランは米国の課した経済制裁で国民生活が窮地に陥っていることも事実で、失業や極端なインフレに喘いでいる。経済制裁の解除を望んでいるのは誰よりもイラン国民であろう。70年代、イラン革命前に筆者がアメリカ留学中に会った膨大な数のイラン人留学生たちは、間違いなく、アメリカびいきで、アメリカの学位を以て社会の中枢で活躍してきたはずだ。だが、彼らも、トランプ政権以来、アメリカに愛想を尽かしてしまったのだろうか。
 多様性を強調して大統領の職を得たはずのバイデンだが、多様な国々の人々について考慮した形跡はない。露ウクライナに停戦案を呼びかける気配はなく、イラン国民の苦しみも酌量することはない。バイデンは二流の秀才でしかなく、アイビーの一つシラキュースは出ているものの、もっぱら家族愛で人気を得、ウクライナ疑獄に至っては、息子をウクライナ大企業に利権目当てで赴かせた親バカぶりが原因だ。バイデンはアメリカの落ち目を加速させた。
 かといって、トランプの再登場では、再び、パリ協定の破棄、対イラン、対中国強硬政策に戻ることになり、世界に混乱を招く。アメリカがアメリカらしくあるためには、新たなリーダーの出現が必要である。アメリカらしくとは、世界の平和を念頭に置いた政治が行われることである。アメリカ大統領で、海外経験があるのはクリントン(ローズ奨学金でオクスフォード留学)、オバマ(幼少時にインドネシアで育つ)、アイゼンハワー(第二次世界大戦中の欧州最高司令官)だけである。世界の中心はアメリカであるという発想から抜けず、多くの国の失望をもたらしている。
 さて、その日本も、ここ暫く解散風が吹いている。失礼ながら、我が総理大臣もバイデンと似通っていないか。二流の世襲秀才であり、親バカを発揮し、印象とは逆の安倍タカ派路線を引き継いで、周囲の失望を買っている。せめて、内閣改造し、政界にはいない逸材を民間から引き抜き、日本の落ち目を食い止めてほしい。

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