抵抗勢力
小泉元首相が「誰が抵抗勢力なのかは、やってみないとわからない」と言ったのは有名な話だ。その国民的人気は抵抗勢力を抑え込んで5年にわたる長期政権をやり遂げた。
現在の政治状況では、二大政党制はもはや望むべくもない。ならば、健全な抵抗勢力を作ることから始めねばならない。その候補が、先ずは自民党内のリベラル派、たとえば古賀誠氏に期待がかかる。しかし、いつの世もリベラルは政権固めが弱く、マスコミに叩かれやすい。過去には、待たされた挙句首相になった宮沢喜一も、加藤の乱で失脚した加藤紘一も知識人であり、まっとうなリベラル政治家であったが、志半ばで終わった感がある。世襲議員と未熟な新人議員の多い現在の自民党にこれくらいの人材がいるかどうか。
同じ与党の公明党は、庶民、福祉、平和をキーワードにしているはずが、いつの間にか、集団自衛権も認め、与党の立場を維持するほうが下手な抵抗勢力になるより望ましいと転換を図りつつある。
野党はどうか。野党の役割はそもそも抵抗勢力のはずなのだが、最近では、一強自民党に尻尾振る野党が増えた。民主党は右に行くべきか左にかじ取るべきか股裂き状態だ。現在、確実な抵抗勢力は、共産党と社民党だが、どちらも弱小政党であり続けている。社民党は存続の危機すらある。
以前、共産党の党首が、究極は階級闘争に勝って完全平等な労働者の社会を作ると言っていたのに驚いた。マルクス主義が実際に信奉されているとは知らなかった。なぜなら、草の根の共産党活動家は、明らかにマルクス・エンゲルスなど読んでいないからである。マルキシズムとは関係なく、「貧しい者優先」の哲学で活動をしているのが現状だ。
筆者は、マルクス理論の後継者であるウォーラーステインの世界秩序論を少し勉強したことがあるが、現代を代表する世界的社会学者の考えが共産党から発せられたことはない。もし、共産党が抵抗勢力として力を発揮するなら、明確な論理が必要ではないか。
社会民主主義は、ヨーロッパで一大勢力であるのに、日本の社民党は、そうはなれない。なぜか。フェミニズム、環境主義、原発反対が論理よりも状況や感情優先で発せられるからだ。
さて、こうしてみると、安倍政権は安泰だ。財界、アメリカ政府、外国人投資家、マスコミを惹きつけて長期政権を狙うであろう。ただし、この中で、アメリカ政府はいつ安倍政権を見放すかわからない。オバマ大統領、バイデン副大統領、ライス大統領補佐官はいずれも安倍嫌いであると処々に書かれている。
本当の抵抗勢力はアメリカ? 戦後の歴史がそうだったものな。