政治カオスを治める
政治の世界はまさにカオスである。政策の不作に加え、政治とカネの酷すぎる状況。結論を急げば、自民党が分裂し、まともな政治が行える集団が新たな政治をリードしていく以外の選択はあるまい。そして、もう一つ提言したいことがある。
政治のカオスの背景には、もっとスケールのでかい人類のカオスがある。気候変動、海洋酸性化、金属汚染、アンモニア、そして人間の考える力である。これは過日、川幡穂高早大特任教授のお話で諭された内容である。人類の抱えるカオスの全体知に迫るお話であった。
全体知という言葉は寺島実郎多摩大学長がよく使う言葉で、一つ一つの情報を全体として捉えることによって世界を理解するための認識である。上記五つのカオスは全て人間が生み出した結果であり、川幡先生によれば、人間が引き起こした現象が顕在化した地質時代を「人新世」と呼ぶことが始まっている。その開始は1950年という。
20世紀初頭、コンクリート等から成る人工物の総量は生物の総量の3%を占めるのだそうだ。人間のなせる業のすごさである。地球温暖化の原因が二酸化炭素であることは科学的に証明され、気候変動のカオスを引き起こす。我々は既に多くの異常気象を経験している。二酸化炭素は海洋酸性化のカオスも引き起こし、炭酸塩が溶けて既に貝やサンゴ礁、食物連鎖上位の魚類に影響が出ている。
そのためにカーボンニュートラルの政策が流行り、二酸化炭素を抑制する電気自動車や太陽光発電が推進されるが、リチウムやアルミなどの需要が高騰し、電気社会は有害物質を排出すると先生は言う。これが金属汚染のカオスである。
アンモニアは約8割が肥料用に使われるが、アジアの電源に多い石炭火力発電でアンモニア燃料を混ぜて使うと二酸化炭素排出が減らせる。アンモニアを肥料に使うのか燃料に使うのか、取り合いになるのがアンモニア・カオスであると先生は指摘。アンモニアの化学肥料なかりせば世界人口は半分だったとの試算もある。
さて、最後に、川幡先生のお話の「オチ」は、人間の考える力のカオスである。AIの発展により、人間はAIに飼い慣らされ、頭脳が縮小するとのことである。犬も猫も野生のオオカミやヤマネコに比較すると、頭脳は6割程度に縮小している。人間に飼い慣らされ、野生で生きる術を失ったからである。人間に迫る「考える力のカオス」は戯言ではない。
カオスの渦中にあるにも拘わらず、学問も職業モラルも身に着けない政治家カオスを一掃するのは、科学者の力であり、政治家の背中に「二酸化炭素」のレッテルを貼って追放する役割を果たしてほしい。