政治よどこへ行くーどこへも行かない
2016年は株価下落と円高傾向で始まり、日銀のマイナス金利政策も登場して、アベノミクスの評価が下されようとしている。
日本経済に外から影響を与えるのが、中国の経済減速とアメリカの好況ゆえの金利引き上げである。そのアメリカでは、一年近くもかけての大統領選が始まっている。大統領が誰になるかによって安保法もTPPも変わって来るだろう。
だから、日本人は、アメリカの大統領選に関心を持つ。しかも、今回の選挙は、ドラマティックだ。8年前に初めての黒人大統領が誕生したが、今回は初めての女性大統領が誕生するかもしれない。しかし、盛り上がりは、それ以上に、非主流派の、民主党サンダース、共和党トランプが貢献している。
社会主義者を自認するサンダース、暴言居士のトランプ、そのトランプに初戦で勝ったキリスト教福音派のクルーズのいずれが大統領になっても、アメリカ社会は揺すぶられる。アメリカのアイデンティティすら失いかねない。しかし、人々は最後まで「極端な政治」を支持するとは限らない。大方の見方は、選挙が佳境に入っていく過程で、当たり前の人が当選に近づいていくと観測される。
では、当たり前の人はヒラリー・クリントンなのか。テレビのコメンテーターがいみじくも言ったように、「ヒラリーがファーストレディーとして最も輝いていた時代を知らない世代が増えた。ヒラリーはもうお婆ちゃんだ」は一理ある。昨年ヒラリーが出版した「困難な選択」は、かつて氏が力を入れた児童虐待や社会保険の政策ではなく、国務長官として外交に携わった記録である。筆者の評価は、面白くない。氏は、やはり弁護士であり、社会問題に多くの見識を持つが、外交は得意ではない。もっと自分自身を訴えてほしい、オバマに敗れた後、8年間も待ったのだから。
翻って、日本の政治はどうか。夏の参議院選に向けて、共産党は一定の伸びが期待されるが、民主党と維新党は果たして統合政党を作ることができるのか。否、できそうにない。では、これまで、他に選択肢がなく消極的に自民党に投票してきた有権者の票を奪う新党はできるのか。否、できそうにない。
アメリカの大統領選のように、激しい戦いの中から「なるようになる」結果を生むのとは反対に、日本では、しょぼくれた迷走と紛争の中から、やはり「なるようにしかならない」結果を生むことが予想される。
確かに、甘利元大臣の不埒すぎる収賄、根性が軽率な若手自民党議員の不倫辞職は、政権与党の奢りの表れだが、敵失だけでは、野党が有権者の支持を得ていくことは難しい。
日本の政治よ、どこへ行く。どこへも行かない。ただ、アメリカの大統領選を対岸の火事として眺め、中国の動向に気を揉みながら、自浄作用のない、惰性の続きを見せてくれるだけだろう。アメリカに比べ三文劇だ。