日々雑感

「成長の限界」から45年

  今度行くシンポに、1972年「成長の限界」の筆者デニス・メドウズの名があった。イタリアのシンクタンク・ローマクラブが世界の環境学者をチームにして書いた地球環境への警告書として知られる。
 私も、ミシガン大学大学院の環境経済学の授業で、この本を読んだ。当時は、世界レベルのベストセラーで、このままエネルギーを使い続け、人口が増え続けると、21世紀前半には地球は崩壊するという内容だった。
 今、21世紀の前半、農業生産は飛躍的に上がり、エネルギーは化石燃料だけではないエネルギーミックスの時代になった。この本が指摘した通りにはならなかったが、世界の環境会議の根底には、ローマクラブが提起した地球の疲弊を恐れる考え方がベースになっている。
 それにしても、その主たる著者であるメドウズが今般の講演者とは驚いたのだが、実は彼は1942年生まれ、本を書いたときはわずか30歳だったのだ。私の関心は、今も彼が同じ考えを持っているのか、あるいは、状況や学問の発展で考えを変えたのか、だ。
 ローマクラブを立ち上げたのは、タイプライターで有名なオリベッティの会長だった。私は若い頃、オリベッティのタイプで論文などを書いていた。少し重たいキーの感触と音が忘れられない。そのタイプライターは、今はどこを探しても見当たらない。それほど世の中は変わった。地球環境問題は、宗教論的になりがちな分野だから、新しい科学が常に実証していくことを望む。

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