日々雑感

認知症に新しい風?

 一昨日、認知症のキョーメーションケア研究開発と実践をしている波田野政治氏の話を聴く機会を得た。脳科学を使い、認知症行動を起こす脳の位置を特定させ、様々の行動に対応する緩和方法を開発している。徘徊などの異常行動が7割以上の患者において緩和されるとのことだった。
 認知症に関する論文には、化学療法ではなく、昔話によるコミュニケーション療法などを見かけるが、医薬品や医療機器と違い、これらの療法は治験を行った上で確立した療法として認められることは難しいだろう。
 他方、新薬については、認知症の原因となる物質アミロイドβを除去する薬などが登場しているが、一般的な治療としてまだ知られていない。また、この欄で既に紹介したが、ノーベル賞学者リュック・モンタニエ博士の講演によれば、酸化ストレスを除去する認知症治療法も確立していると言う。
 460万という日本の認知症患者にとって、これらの治療法に医療保険がどう対応するかがまさに課題であろう。現在では、年間新たにガンと診断される患者数は90万人。死亡は年間35万人。ガンが何と言っても克服すべき第一の疾病である。しかし、患者数から言えば、認知症は、死亡には至らないが、ガンに負けるとも劣らない優先順位の高い疾病になった。
 研究開発から治療へと向かいつつある認知症だが、現在同時に必要なのは、認知症患者の尊厳と財産を守り、QOL(生活の質)を高めることである。どんなに「予防生活」を自分なりに送っても、それは死へのモラトリアムでしかなく、最後にかかる死ぬための医療費は同じだとする研究もある。ならばこそ、生活の質を高める方法に力を入れねばなるまい。

日々雑感一覧