日々雑感

70歳代の死

総務省統計局発表の人口推計によれば、日本人口は1億2693万人(2016年11月1日現在確定値)。人口減少は数字の上でも明らかで、毎年30万人減っていく。
 5歳刻みの年齢階級別人口を見ると、団塊世代を含む65-69歳が1025万人で、その前後、60-64歳が814万人、70-74歳が741万人と比べても突出している。団塊世代は既に1割以上が死亡しているが、それにしても人口グラフでの突出はまだまだ続く。
 団塊ジュニアを含む40-44歳は969万で、団塊世代はまだこれよりも多いということだ。0-4歳に至っては496万人であり、「生き延びた」団塊世代の半分にもならない。この数字をもとに人口動態統計を扱うのが厚労省だ。厚労省は合計特殊出生率が上昇していると言うが、これは、子供を生む女性の数が減っている、つまり分母が小さくなったための見かけ上の改善であり、出生の絶対数は周知のとおり、減り続け、今は年100万を割った。哀しいかな、ニッポン。
 こうなって来ると、団塊世代を始め、年金や医療で金のかかる連中を敵視する風潮が現れるが、皆が皆、平均寿命、男80.79歳、女87.05歳まで生きられるわけではない。飽くまで平均であり、既に私も多くの知人を亡くしている。
 職業別平均寿命というデータもあるのだそうだが、タブー化していて公表はされない。だから、感覚的だが、政治家・役人は長生きだ。女性に限って言うと、今高齢者となっている政治家・官僚は草分け時代だから人数は少ないが、長生きが多い。
 かつて活躍した女性の中で70歳代前半に静かに早世した女性のことを思う。一人は佐藤欣子さん。戦後数少ない女性検事のはしりとして活躍。中曽根総理に引っ張られて参議院選挙に出て落選。そのあとの欣子さんは人生に慎重になった。
 最愛の夫君佐藤誠三郎東大教授を亡くされてから、後を追うように2008年亡くなった。実は欣子さんは、当時珍しい女性の「保守論客」で、結構極論も語っていた。稲田朋美、高市早苗、桜井よしこ等よりもはるかに強面で、彼女らの先駆者と言えよう。
 もう一人は、影山裕子さん。電電公社で管理職に就き、一時は一世を風靡するほど強気な女権論を展開した。欣子さんと同世代だが、そのころ、民間で活躍した女性3人、日本航空の滝田あゆちさん、高島屋の石原一子さんとともに、つねにマスコミをにぎわす女性のロールモデルだった。しかし、退職後は、週刊誌などによれば、家族問題などに悩み、いつしか第一線から消えていた。そして、2005年、70歳代前半で亡くなった。欣子さんのように保守ではないが、さりとて、土井たか子のような革新ではなく、当時の公民権運動としてのウーマンリブを引っ張る役割を果たした。
 美人薄命と言うが、真実の人もまた長生きが相応しくないようだ。欣子さん、影山さん、良くも悪くも強烈な個性だったが、もう知る人ぞ知るの時代になった。日本の新たな人口に新たな夢と価値観をもたらす人が必要だ。

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