日々雑感

何を目指すのか、政治家

 昨日、ある大きなイベントで国会議員があいさつに立った。聴衆に向かい、笑顔で「皆様のご支援のお蔭で、私はここにあります」と終始、支援を得たことの礼を述べた。彼が政治に出て、何をしたいか、どんな社会を目指すのかは全く言及がなかった。
 昨年の参議院議員選挙でも同じ光景を目にした。ある全国団体の大集会で、候補者は、政治理念に触れることなく、政策に触れることなく、支持団体への感謝の気持を30分も述べて演説を終えた。
 集会は、確かに支援者だけを対象としたもので、支援団体の利益のために働けばよいので、自分のやりたいことを述べる場ではない、そう割り切ってしまえば、それでいいのかもしれない。しかし、一人でも外部の者が入っていれば、人や政策を選ぶ選挙はどこに行ったのだと思わざるを得ない。
 下手すれば、政治家自身が国会議員になりたいだけで、政治理念などはないのだろう。政治的良心があれば、演説の中でその一端を吐露せずにはいられまい。だから、感謝の辞と「皆様の声を国会に届けます」の二つしか言わない人は政治家たるべきでないと思う。
 実現したい理想もない政治家ばかりだから、日本の未来に期待することはできまい。ただし、安倍政権は例外だ。なぜなら、良くも悪くも、実現したいことが端的に表明されているからだ。安倍さん曰く、「軍備を憲法上明らかに持ち、戦前のような一等国にする」「伝統的価値観を大切にし、国民の権利だけではなく義務を明確にする」。これだけ明らかだと、何も考えていない与野党の連中は叶わないわけだ。部分的反対しかできない。それが今の野党の哀しさでもある。
 やりたいことがあるのに次々に阻まれるトランプ政権。やりたいことがあって初めは反発を喰らうが、しばらくすると実現に漕ぎつける安倍政権。この二政権は世界の秩序を維持していくだろうか。多分違う。北朝鮮問題は、外交下手の中国と歴史的に外交上手のロシアの手腕に徐々に委ねられてきた。中国やロシアを超える政治理念を、アメリカも日本も持たねばならぬ時だ。このまま政治貧困ではいられない。焦りを感じる。

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