日々雑感

失われた東京

 浅草の浅草寺は外国人でいっぱいだ。初詣などは、日本人よりも多く、参拝に並ぶ行列からは、さまざまのアジアの言語が聞こえてくる。外国人は「安い、安い」と喜び、円安で伝統ある東京滞在を楽しむ。
 他方で、虎ノ門ヒルズや麻布台ヒルズが新たに登場し、高さを競うタワマンもニョキニョキ立って、コンクリートの城が東京の勢い止まずの印象をもたらしている。集まる人々が、あるいは巨大な城が、誇るのは、終戦後から復興を続けた東京という努力の街だ。
 しかし、待てよ。日本が劣化しているのと同様、東京にも劣化が既に始まっている。南海トラフ大地震が襲ったら、北朝鮮のミサイルが降ってきたら、どこに逃げるのだ。神宮の森や皇居やいくつかの候補地はある。だが、都が防災・防衛の具体策を人々に伝えているだろうか。否、である。
 マンションの価格が平均1億円を超えた首都で、買えるのは、日本人ではない。武田薬品の外国人社長の年収は15億だそうだが、先端のITやバイオからとり残された従来型の中小の社長は、一連の賃上げ圧力にすら応えることはできない。
 幼少時から巻き込まれた受験戦争の果て、一流大学を出ても、夢見るは外資系企業。官僚は消極的選択、政治家は選挙での一発目当てばかりで、永田町と霞が関は無能の集団、活気から取り残されている。
 東京をどうするのかを問うのが都知事選ではないのか。経済的にも、物理的にも、安心、安全の街をどう築くのかが争点ではないのか。若者の夢を育む政策が最も求められているのが東京ではないのか。
 少子化政策にマイナーであり医学的にも問題がある無痛分娩の補助を唄う小池さん。相変わらず何を言っているのか不明で、ただ眉間にしわを寄せて「何でも反対、私は挑戦する」の蓮舫さん。実践的には聊かましだが、どこまで追い上げられるかの石丸さん。都民の思いとずれてはいないか。
 都知事選が終われば、岸田おろしが始まり、意外性のない「やっぱりそうか」の総理が出てきて、海図なき日本の運営が続けられることだろう。失われた東京、失われた日本の始まりが2024年である。

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