日々雑感

もりソバ、かけソバ事件

霞が関で「もりソバ、かけソバ事件」と言っているのは、森友事件、加計学園事件のことだ。「忖度」は、今回マスコミで使われるようになるまで知られていなかったが、これも霞が関では頻繁に使われる言葉だ。つまり、政治家トップの意向を忖度するのは、役人の世界では日常茶飯事なのだ。
 数日前のある会合で、元某省次官を務めた人が「文科省のような硬い役所の岩盤にドリルで穴をあけたのだから、いいじゃないか。騒ぐことはない」と言った。その見方もある。文科省、厚労省など非経済官庁はもとより保守的で、事なかれ主義で、岩盤は固すぎるほど固い。だから、「軽いノリ」の経産省出身で固めた内閣府の規制改革派が安倍さんの名を使ってドリルで穴をあけたのが今回の騒ぎであるとも言える。
 たとえ安倍さんが「自分は指示していない」と言ったところで、名前が使われたのは、江田憲司が言うように「状況証拠」として十分にあるのだから、誰かが責任を取らねばおさまるまい。だから、菅官房長官か萩生田官房副長官が「私がやりました。私は総理を守ります」と言って、辞めればいいだけの話だ。
 もっと前なら、下のレベルの辞任で済んだかもしれない。たとえば和泉洋人総理補佐官。彼は、2012年内閣府を退職するまでは、民主党政権下で「国家戦略特区」と似て非なる「国際戦略特区」の担当者だった。菅官房長官に退官後引っ張られて総理補佐官となり、「特区」の専門性を活かした。彼は、国交省出身で、経産省出身のように「規制改革至上主義」でもなければ、文科省のように「岩盤守る主義」でもなく、政治家御下問を大切にする役人だ(利権の役所出身だから)。前川前次官に「総理が直接言えないから、私から言います」と進言したのは、彼らしい。状況が目に浮かぶ。
 岸博幸という経産省出身評論家が、猛烈に前川前次官を攻撃し、「俺は役人出身だから、何でも知っている。プロセスを見れば忖度の余地はなく、悪いのは、頑なな文科省だ」と独特の容貌で語る。しかし、今回ばかりは、「もりソバ、かけソバ」にマスコミは同情しない。安倍政権の支持率が下がったまま、そう、都議選は小池さんが勝つであろう。ただ、この事件を有効に議論できなかった、国政を与る野党は消えていく運命だ。

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