日々雑感

嘘はホント

安倍新内閣発足。「仕事人内閣」だそうな。なるほど、生死をかける自衛隊の組織を掌握できなかった網タイツの防衛大臣、「地震は人口の少ない東北でよかった」と発言した復興大臣、不規則発言の多い総務大臣は去って、答弁に安定感のある大臣に交代した。しかし、仕事人と言っても各大臣が目指す仕事があるのか、思うようにできるかは疑問だ。河野外務大臣を除いて、安倍総理の意向を確かめずにのびのびと仕事をできる大臣はいまい。
 安倍総理自身が、一番の仕事としていた憲法改正を諦めざるを得ないところまで追い詰められている。ただし、安倍さんのやって来たことのすべてが間違っていたわけではない。足かけ5年になる長期政権は国際社会における日本の地位を安定させた。初期の金融政策は株価の上昇をもたらし、地味だが経済は一定程度回復し雇用が増加している。
 インフレターゲットは失敗、プライマリーバランスは実現できない、雇用は非正規が増えるばかり、・・・といくらでもあげつらうことはできるが、他の政権が担ったとしても、これ以上にはならなかったと思われる。
 しかし、問題は「嘘はホント」の社会に堕落させてしまったことだ。言うまでもない、加計学園のこと。「行政の長の思いを周囲が忖度するのは当たり前だ」とむしろ開き直ってしまった方が早く解決したであろう。そして、忖度した犯人を差し出して、「解決」すればよかったのだ。それを岩盤固い守旧派文科省 対 特区で新たな産業づくりをする革新派経済官庁の闘いに問題をすり替え、迷走した挙句、内閣支持率は落ちた。もう国民は飽きてしまったから、ここでおしまいだろうが、これまでの支離滅裂な政府見解の「嘘はホント」になる瞬間だ。
 社会の上部構造が「嘘はホント」をよしとしたためか、社会全体が嘘はホントが平気でまかり通る。世の中は、政治家やタレントの性行動の不行跡を大々的に報道している。「我々は一線を越えていない」という嘘はホントなのか。組織を離れて、情報が寡少になった高齢者の社会では、自分の情報を確認せずにコミュニケーションをするため、たくさんの嘘がホントに化けている。「あの食品で健康になった」「あの化粧品で肌がきれいになった」「あの宗教で奇跡が起きた」。高齢者ならではの嘘がホントは日常茶飯事。おまけに老いぼれのエロスは嘘かと思いきやホントに存在する。それもそのはず、雇用も社会も年寄りを本気で取り込んでくれないから、「健康のための健康生活」「何かいいことあるかもしれないエロス」が年寄りの嘘でもいいからホントの役割になっている。
 一新した安倍政権に、ホントに活躍できる高齢者対策とホントに出生率の回復がもたらされる少子化対策の仕事人を作ってほしい。

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