保育所落ちた、山尾も落ちた
党首選後にまるで仕掛けられたような山尾氏の不倫報道。民進党が自浄できないで5年、マスコミが親切かお節介か分からぬが、自然解党を仕掛けたとみるのも一興。
政治とは不倫をすることなり、は昨今の状況だが、山尾氏の失脚は、他の不倫議員とは意味が異なり、むしろ豊田真由子の失脚に近い。それは、男性社会で成功してきた人物だからである。今井絵理子のように男に頼らねば生きていけないから、不倫に至ったのではない。
山尾氏も豊田氏も試験制度を突破し、確固とした職業生活を送った上で、政治に出てきた。当然に、人より多く勉強した人間は、勉強不足の多い国会議員の中では「使いもの」になってきた。それは男性ならば好ましいことだが、残念ながら、今の世になっても、女性の場合は手放しで称賛されない。
フェイスブックのCOO(最高責任者)である女性シェリル・サンドバーグがそれを指摘している。「女性は仕事ができても、服装や態度が常に問題とされる」。全米トップクラスの成功者であるサンドバーグが著書「リーン・イン」の中で、女性の社会的活躍には、伝統的な価値感や男女を問わずの嫉妬などが足元をすくうと警告している。
周囲にその動きがあることを知らないまま、自分の成功に慢心してしまったのが、山尾氏であり、豊田氏なのだ。周囲のモグラたちは機会あれば彼女らを引きずりおろしたいと思っていたのだ。知らぬは本人ばかり、まさに世間知らずの試験秀才の哀しさと言えよう。
国会議員の学歴で一番多いのが、実は東大である。しかし、女性の東大卒は極めて少ない。東大は、男性にとっては好ましい学歴だが、女性にとってはそうではない。女性はキャスターや地方アナウンサーなどが好まれ、優しく美しいイメージで、実際に選挙に強い。彼女らが「子供のため、女性のため」と言えば、だいたい、票は集まる。
有権者が議員を選ぶ基準は男女で異なるのだ。いいとか悪いではない、人間には生物的な反応だってある。それでも、サンドバーグは言う。前に積極的に進め、と。しかし、それは「リーン・イン」、つまり、もたれかかって背をかがめて進んでいくことであり、山尾氏や豊田氏がこれまでやって来たように、堂々と風を切って歩いていたのでは、潰されるだけだ。
二人に老婆の助言をしよう。議員を辞め、山尾さんは弁護士を、豊田さんは外資系の会社でリーン・インし、キャリアをやり直すことだ。二人とも若いから、その上で、政治に戻ってきたらいい。民間の経験は、リーン・インの方法をしっかり教えてくれるだろう。官僚出身で、幾度も選挙に敗れた私が、今、まぶしく思うのは、民間で転職をしながらも、確固と自分を築き上げた女性の友人だからである。