日々雑感

児童保護法制

昨日、児童保護の外国法制についてのシンポジウムに赴いた。90年代、児童行政に携わっていた頃、私は、イギリスに出張し、1989年制定の児童法を学んだ。被虐待児や養育に欠ける児童を司法手続きで保護する先進的な法律であり、当時、非常に感銘を受けた。そのイギリスを始め、今回のシンポジウムは、独、仏、米、韓国の同様な法制についてそれぞれの専門家が語った。
 日本の児童福祉法制はもともと行政中心の児童保護であるが、欧米の司法関与の強い法制を少しづつ採り入れてきた。養育不能の親の親権剥奪などはその例である。しかし、行政の第一線にある児童相談所は、裁判所の関与を必ずしも歓迎せず、「福祉の判断」を重視するきらいがある。つまり、措置権者都道府県知事のもとに保護のプロセス、内容が決められる。欧米では、裁判所が保護の内容まで決定することが多い。
 日本は、特に、立法、司法と比べて、行政権が突出していることの表れだが、児童法制については直ちに、欧米並みにすることがいいのかどうかは疑問が残る。ただ一つだけ言えるのは、日本の福祉の世界は資格の世界ではなく、専門家が少ないことだ。医療も司法も専門分野の人間が資格を持って仕事をするのに対し、福祉では、社会福祉士や児童心理士の業務独占の仕事は少ない。それでよいか、という問題はある。
 少子化対策は保育を中心として声高に言われてきたが、要保護児童対策は、重点政策になったことはない。少ない子供を一人残らず社会に送り出す政策は、少子化対策のど真ん中に位置付けるべきであろうに。
 昨日は、台風が近づいて、雨の中、衆議院選の投票日だった。しかし、誰に聞いても選挙は全く盛り上がらず、口先の公約は要らない、児童の問題を始め専門家を増やし、政治レベルで真剣に取り組める人を増やしたいと語り合った。

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