日々雑感

バラマキと安保

   一昨日、多部田茂東大教授の海洋利用のお話を聴く機会を得た。世界では、中東紛争やトランプ大統領の出現で地政学回帰の現象が起きているが、海洋国家としての日本は、資源、エネルギーそして食糧のための海洋利用が地政学的政策になるはずだ。日本の国際社会での地位を考える時、最も重要な施策と言っても過言ではない。
 しかし、自然エネルギー開発においても、我が国の方針が明確でなく、脱CO2の欧州、大きな需要を背景に自然エネルギー開発を積極的に仕掛ける中国に大きな後れを取っている。最近のドイツのCOP(環境会議)から帰国した人の話によれば、欧州の記者団は日本を全く相手にしないとのことだ。
 海洋では、一時期騒いだ油流出の問題は減ったものの、富栄養化、乱獲、海洋酸性化、海洋ゴミの問題が深刻化し、陸地と同様、海水温が上昇していて、魚類やサンゴへの影響が報告されている。科学・技術もこれに対応して、大規模沖合養殖、海藻場を使った炭素固定(いわゆるCCS)、メタンハイドレートの採掘、潮流発電を始め再生可能エネルギー開発、海洋深層水利用など、多くの研究開発が行われている。
 問題は、その研究開発が、国策として大々的に行われていないことだ。筆者が議員時代に、メタンハイドレートは、7千億の投資をすれば飛躍的に進められると聞いたが、その後政策の重点になっていない。当時提案された宇宙太陽光発電も。岩手県が敷設候補のリニア・コライダーも7千億から1兆円の投資が必要と言われていたが、いずれも着手されていない。
 他方で、教育無償化は2兆円の予算が毎年組まれることになる。選挙のためのバラマキは優先されるが、国の生き残りに最も重要な国家的ベンチャーを叫ぶ大物政治家がいない。また、トランプ大統領訪日の際に、アメリカの先進兵器を買うことが即決されたが、なぜ自然エネルギー開発や海洋開発は「即決」されないのか。
 バラマキと安保だけでは近視眼の政策だ。この国の中長期的な発展をめざし、自然エネルギー、海洋開発を最優先に投資しなければ、国は亡ぶ。絶対に滅ぶ。

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