日々雑感

忙中閑

 明日の米朝会談が迫って、報道はこの件で大忙しだ。少し前までは、一連のセクハラ騒動で忙しかったが、まさにのど元は過ぎた。したがって、昨日の新潟県の知事選は、大きなニュースに押されて全国版にはならなかった。
 前知事の買春問題による辞任は財務次官のセクハラ問題の陰で小さい記事になったが、今回も、今後の政権を占うはずの選挙が米朝会談の陰に隠れた。この結果は、安倍政権を支持するのではなく、森友・加計に幕引きをするのでもなく、残念ながら与党に政治を任せるしかあるまいとの有権者の諦観による判断だ。
 ここ数年、与野党ともにモラル低下の記事がラッシュの如く報道された。新潟県前知事は弁護士でありながら買春に手を染め辞職したのだが、秘書への暴言報道で衆議院選を落選したり、衆議院選に勝って不倫を堂々続行したりの女性議員もニュースを沸かせた。有権者は「立派な経歴は必ずしも立派なモラルを意味しない」と学んだ。同時に、これらの方々は政治生命を失った。
 こういう俗悪なモラル問題ではなく、自らの言動に足をとられ、難しい局面に立つ政治家もいる。三人の女性政治家が頭に浮かぶ。小池百合子、田中真紀子、野田聖子である。いずれも女性初の総理と言われたことがあり、女性の中では現在この三人に及ぶ実力派はいないだろう。
 小池氏は言うまでもなく、「排除の論理」を振りかざして、ほぼ次期総理の可能性を失った。コメント総出なので、筆者が付け加えることはない。田中氏は、外務省の組織運営で問題を残したが、筆者は現職時代に、外務委員会での田中氏の委員長としての裁きを観た。実は、優れた知識と判断力を持つ方だと知った。考えは正しいのだが、組織的行動が伴わないだけだ。引退してほしくない。
 野田氏は、郵政選挙で、無所属でも勝ち上がるほどの選挙基盤を持っている。その強さもあって、安倍総理に独り挑む。しかし、その出産と障碍児にまつわる話は世間受けしない。筆者は数年前のこの欄で、「お母さんになりたい」という気持ちは称賛に値すると、大方の議論に反論をぶつけた。
 「女は弱し、されど母は強し」。守るものを持った時に女は本当に勝負に出るのだ。昨日の新幹線殺傷事件では、男性が女性を守ろうとして自らが殺されてしまったが、男は本来、集団を守るために生まれついている。女が男に伍していくためには、守るべきものを作る必要がある。むろん、それは子供だけだと言うつもりはないが。守るべきものを持った野田氏は活躍を続けるだろう。
 さて。報道は米朝会談で精いっぱいだが、忙中閑で、より日常的な問題を少し考えても悪くは無かろう。

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