移民法は人口問題を解決するか
昨年末出入国管理及び難民認定法の改正により、新たに在留資格「特定技能」が設けられ、これを施行するため、4月1日に法務省の外局である出入国在留管理庁がスタートした。出入国在留管理庁在留支援課長に厚労省からの出向で赴任した平嶋氏の話を聞く機会を早速に得た。
今回の法改正は、労働力不足を補うため、外国人に新たな資格を設けるのであって、恒久的な移民法ではないと安倍首相は何度も繰り返していたが、果たしてそうなるのだろうか。
失踪問題で社会を騒がせてきた、建設現場や農業に携わる従来の技能実習生は、試験免除で特定技能のカテゴリー1の資格が得られ、職種の範囲は狭いがより熟練した場合には、家族帯同も許されるカテゴリー2に進むことができる。
これまでいわば政府開発援助の発想により、日本の技能を学ばせるという考え方で行われてきた技能実習生は、労働のために入国する地位を与えられることになる。もしかしたら、低賃金や過酷な労働から労働法が守ってくれることが期待できるかもしれない。しかし、それは、上記管理庁がどれだけ関与できるかによる。従来は内外の民間斡旋業者に任せっきりだった。
筆者は、この移民法(改正という形で行われ、重要な法律なのに呼び名が決まっていないから、あえて、こう呼ぶ)は、別の観点から、20年以上にわたる少子化政策の失敗によるものとみている。もう人口が増える兆しは見られない、だから、アメリカやドイツのように、労働力を外から調達する手段を合法化したのだ。
しかし、技能実修生は技能と日本語の試験を免除されることから、実態は初めから単純労働を想定していることは明らかだ。母国より賃金の高い日本で、稼いで帰ることが目されている。だが、母国の賃金が上がってきた中国やブラジルの入国は減ってきている。今では、ベトナムやネパールなどが多いが、いずれ母国と日本の賃金格差が縮まれば、「稼いで帰る」メリットは低下する。
現に安倍総理は「5年間に34万5千人の入国を予定しているが、人材が不要になったらやめる」とまで発言している。なるほど、あからさまに日本の社会のための都合で作られた法律である。しかし、そこは、人間は生身、どんな事態が待っているかわからない。特定技能カテゴリー2に上がるのは極めて難しいが、もし、日本にとどまりたいと思えば、あらゆる手段を使うであろう。
筆者がアメリカに滞在した1970年代は、多くの偽装結婚があり、アメリカのグリーンカードを手にしようとした移民が後を絶たなかった。いくらトランプ大統領が国境に壁を作っても、人間の知恵は壁を超える。しかし、忘れてはならない、アメリカもそしてドイツも時々お荷物になる移民によってこそ発展してきたのだ。日本もいよいよその必要性ができてきたのではないか。
ならば、入国及び在留条件を緩和してはどうか。少子化政策の失敗を埋めるのであれば、定住定着のために施策を講じたほうが良いのではないか。もちろん、既に地域住民と外国人は多くの軋轢を生んでいる。また、ブラジル人コミューニティーなど日本社会に溶け込まない状況が生み出されている。
しかし、保育所改革など実際には人口増加につながらない少子化政策を飽きもせずやってきた政府がこれまでタブーだった移民政策に舵を切ったならば、外国人定住化政策とセットで行わねばならないのではないか。人権という観点以上に必要性という観点から、移民法の発展を願いたい。