結論より論理を
この1年、気候変動をテーマにした会議に出席する多くの機会に恵まれた。二酸化炭素による地球温暖化は、ある国際会議では世界の97%の科学者が正しいと信じているとの報告も聞いた。しかるに、トランプ大統領は「その説は信じない」と断言する。なぜなのか。
それは、地球の気候変動には、何億年のサイクルと、ミランコビッチサイクルと呼ばれる10万年単位のサイクルと数万年単位の寒冷化サイクルがあり、その大きなサイクルの中では、地球はむしろ寒冷化に向かっていると考える学者がいるからなのだ。トランプはそれを根拠にしているはずなのだ。
しかし、我々ホモサピエンスの歴史は、20万年前にアフリカで進化し、6万年前に世界に広がっていったと考えられている。文字を作り、社会を作り、自ら食糧生産をし、文明を築いたのは高々1万年以内だ。未来に向かってもあと1万年続くかどうかは神のみぞ知る世界であろう。ならば、何万年ものサイクルで気候変動を語るのは意味がない。
それよりも重大なのは、我々が化石燃料を使うようになり、産業革命後300年、特にこの100年は、急激に二酸化炭素の排出量が増え、異常気象、農業の危機、海に溶け込んだ二酸化炭素による海洋酸性化がサンゴ礁など石灰化生物の絶滅を導いているという事実だ。つまり、人為によってあまりにも「急速すぎる」変化が起きていることなのである。
今再び宇宙開発の国際競争が始まっているが、地球の隣の火星や金星の探索が進められる中、我々地球が唯一生命体を維持してきたのは、火星や金星と異なり、太陽との位置関係で、二酸化炭素がサーモスタットの役割を果たし、生命体が維持できる温度が保たれてきたからなのだ。
ならば、簡単だ。世界で二酸化炭素排出を抑える協力をしていかねばならない。人類全体のためだ。トランプ大統領のパリ協定離脱は「そんなエゴ」認められないというべきであろう。しかも、人類は、どんどん美食家になり、野菜系よりも肉=たんぱく質を摂取し、たんぱく質の形成には大量のエネルギーが必要であり、回りまわって二酸化炭素の排出を多くする。
しかし、悲しいかな、たんぱく質を摂らねば人間は賢くなれない。近年の認知症の研究でもたんぱく質の摂取との関連が指摘されている。地球温暖化をどうすべきか方策を考えるにも、矛盾同着だが、せっせと美食しなければ考えつかないということになる。
ただし、「二酸化炭素はよくない、環境を守れ」は「デブはよくない、健康を守れ」と同じで、結論だけの押し付けだ。下手すれば、単なる政治スローガンになって「環境守れ、健康守れ」と叫ぶオバチャンが増えるだけになる。違う、違う、結論だけでなく、論理を我々に納得させなければならないのだ。
もしかしたら、我々は氷河期に向かっているかもしれないが、急激な二酸化炭素排出は、我々を「火遊び」で滅亡させるかもしれない。以上は、過日、川幡穂高東大教授の気候変動のお話を聴きながら、思いを深めたことだ。